愛しい貴方に輝きを (4)


 エリオ&フェイト


「エリオ……ですか? いや、ちょっと前に顔は出してましたけど、それっきりですね」

 フェイトはエリオを探していた。
 その後、どうしたいのかは自分でもよく解らない。

 ただ、会いたいと。
 なのはやはやて達と話しているうちに、彼の顔が見たくなった――ただ、それだけの事でしかない。

 しかし、そういう時に限ってエリオが捕まらない。
 自室にも帰って無い様子で、行方を知っていそうなヴァイスの元を尋ねてみても収穫は何もなかった。

「急ぎの用なら、通信なり思念通話なりすれば捕まるんじゃないっすか?」
「あ……えっと、そ、それほど急ぎの用じゃないし……う、うん、大丈夫だよ」

 知らぬうちに表情が沈んでいたのか、ヴァイスが心配そうに語りかけてくる。
 確かに彼の言うとおり、連絡をとる方法なら幾らでもある。
 けれど、なぜか今のフェイトには――それは何か違うような、そんな論理的ではない感情が存在する。

 実際、特別な用事などないのだ。
 ただ、一目だけエリオの顔が見たいと、そんな至極どうでもいい思いを元に動いているに過ぎない。

 結局のところ、今夜会えようが会えなかろうが、何一つ変わるものなど無い。

「ごめんね邪魔しちゃって……」

 そう言い残して立ち去ろうとするフェイト。
 そこに浮かぶ表情は明らかに未練の色が浮かんでおり、肩を落として踵を返すその姿はあまりにも痛々しすぎる。

 ヴァイスはそんな彼女の後姿に、ハァと一息つくと頭を掻きつつフェイトの背に声を掛ける。

「たぶん、部屋にいないなら。どっか人気の無いところでぶらぶらしてると思いますよ」
「ふえ?」
「色々と悩んでたみたいなんで、発破かけたんですけど、思いのほかダメージ受けてたみたいなんで――」
「な、なにっ! エリオに何かあったの!?」

 と、ヴァイスの言葉の途中で彼に詰め寄るフェイト。
 その形相は必死というかなんというか、随分と鬼気迫るものである。
 そんな彼女の気迫にヴァイスも思わず後退さる。

「……い、いや、そんな大層なことじゃなくて」
「エリオッ、何か悩んでたの? 大丈夫なのっ! わ、私の所為なのかな?」

 心配そうに眉根を寄せ、瞳に大粒の涙を溜め始めるフェイト。
 なんというべきか、関係各所にこのシーンを見られると自分の命がかなり危険に晒されそうでヴァイスは生きた心地がしないまま、叫ぶようにフェイトを諭す。

「お、落ち着いてください! 大丈夫ですから、んな急にどうこうなることじゃないですから!」
「そ、そうなの……」

 未だに涙目のままだが、とりあえず落ち着きを見せ始めるフェイト。
 ヴァイスからしてみれば危ういのはどう考えてもエリオではなく、フェイトの方である。

「まぁ、なんつーか思春期によくある悩みっつーか、なんというか……」
「思春期?」

 よく解って無い様子で首を傾げるフェイト。
 エリオは色々なしがらみを抱えた上でフェイトの行為を忌避していた雰囲気だが、彼女のそれは天然のようである。
 つくづく苦労しそうな二人だなぁ、とヴァイスは溜息をつく。

「まぁ、そこらへんはプライバシー云々って事で――でもまぁ、何とかできるとしたらフェイト隊長だけですんで、まぁ頑張ってください」
「え……はい……?」

 よく解らぬまま首を縦に振るフェイト。
 けれど、エリオがいま何かしらの悩みを抱いているという事実だけは解った。

 そして、ヴァイスの言葉が確かなら、それを解決できるのはフェイト自身であると言う事。
 なら、迷う必要など無い。

 好きな人を――救ってあげたいと思うのはとても自然な感情なのだから。

「じゃあ、私はエリオを探してくるね」
「ええはい、頑張ってください。応援してますよ」

 慌しく走り去っていくフェイトの姿をヴァイスはどこか感慨深げに呟く。
 紡がれた言葉は正しくヴァイスの心情を表したものだった。

 どこか放っておけない二人だから、だから幸せになって欲しいと心から願う。
 どんな結末だとしても、最後にはみんな笑っていられるように、と。

「まったく、お似合いだよ、ホントに」

 最後にヴァイスは誰もいなくなったその場で小さく呟いた。


 ●


 肩で息をするエリオを迎え入れたのは、驚きに目を見開いた四つの瞳だった。
 残念なことに、その中にエリオが求めている者の姿は無い。

 エリオはキャロに送り出された後、まっすぐこの場所――フェイトの自室である部屋へと赴いた。
 しかし、彼を出迎えたのはルームメイトであるなのはと、なぜか部隊長であるはやてだった。

 予想外の事態に、戸惑いを覚えつつも、自分の目的を思い出し、声を上げる。

「フェ、フェイト隊長はいらっしゃいますか?」

 ほぼ全速力で走ってきた所為か、息が自然と荒くなる。
 だが、そんなエリオの姿を見てなのはとはやての二人はお互いに趣の異なる笑みを浮かべる。
 なのはは嬉しそうに、そしてはやてはどこか楽しそうに。

「ふーん、ほーかほーか、フェイトちゃん探しとるんかぁ、まぁ立ち話もなんやからちょっとこっち来ぃ」

 そう言って、手招きしてくるはやて。
 エリオには何故かその表情に浮かんでいる笑みに、このうえなく嫌な予感を感じる。

「あ、いえ……いないんでしたら、その僕は……」
「まぁまぁ、いいじゃない。わたしもちょっとお話聞かせて欲しいなぁ?」

 そう言って、後退さりしようとするが、何故かいつもならば助け舟を出してくれそうななのはも、はやての提案に乗り気である。
 こうなってしまうと、エリオに強行突破する度胸も実力も無い。

 結局エリオは、肯定も否定もしないうちに、なのは達に手を引かれ部屋の中へと連れ込まれる。
 あっという間に進行していく状況に、エリオは果てしなく、嫌な予感しかしない。

「とりあえず、掛け付け三杯ってワケやないけど、一息つきぃ、喉かわいとるやろ?」
「は、はぁ……頂きます」

 先程まで、話し合い――というか、お喋りにでも興じていたのかエリオが座らされたテーブルの上にはお菓子の袋や紙コップが並んでおり、ジュースの入ったコップを勧められる。
 とはいえ、ゆっくりするワケにはいかない。
 エリオもやるべき事があるのだ。フェイトがここにいないのならば、その目的を達成することはできない。
 できるだけ早く、この場から脱するべく、エリオは手に持ったジュースを飲み干すべく、紙コップを傾ける。

「それで、なに? フェイトちゃんに告白でもしにきたん?」
「!? ……ぷぼっ、げはっがはっ!!」

 しかし、唐突にそんな言葉を投げかけられ咽てしまうエリオ。
 噴出さなかったのは僥倖と言うしかないが、その場で背中を丸めて苦しそうに咳き込んでしまう。

「……な、なんなんですかいきなり!?」
「ん? やったら、なんか別の用事なん?」

 口元を拭いながら叫ぶエリオだが、そんな彼をテーブルを挟んだ二人はやはり笑みを浮かべたままそんな風に尋ねてくる。
 そんな二人のまっすぐな視線に、エリオは言葉を詰まらせてしまう――が、彼女たちの視線から目を逸らすように俯きつつも、

「そ、そうです……」

 恥ずかしそうに、しかし偽らざる自分の思いをエリオは呟く。

 もう、逃げるのはやめにした。
 キャロと約束したのだ、もう逃げないと。

 だから、ここで嘘の言葉を紡ぐわけには行かない。
 順序がエリオの考えていたものとは前後してしまったのだが、どちらにしろフェイトの親友である彼女たちの耳にはいつか触れることになるのだろう。
 それでも、言い辛いことであるのは確かだ。

「子供の戯言かも知れません、よく知りもしないで言ってるのかも知れません。けど……嘘じゃないです」

 問われる前に、エリオは言葉を紡いでいた。
 自分自身に嘘をつくことはやめた。
 だが、自分がフェイトに異性として好意を持つ事が祝福されるようなもので無いことも重々承知していた。

 年齢の問題、立場の問題、それらはどうしようもなくエリオとフェイトが不釣合いであることと思うだろう。

 同じ職場の人間――いや、フェイトの親友ならばそのことに対し危惧するのは当然だろう。
 けれど、エリオはもう決めていた。
 けして誰からも理解されないとしても、この気持ちだけは伝えなくてはならないと。

 だが――

「あははは、そーかぁ、エリオのほうは準備万端かー」

 そんなエリオの危惧を払拭するように、はやての笑い声が響く。
 予想できなかったそんな彼女の反応に、エリオは目を瞬かせることしか出来ない。

「えっと……その、一応僕、本気のつもりなんですけど? その……女性として、フェイトさんの事を――」

 もしかしたら、冗談か何かだと思われているのかもしれないと不安に駆られ、改めてそう言う。
 しかし、エリオの言葉は逆にはやての眉を不機嫌そうに歪ませる結果となる。

「んなこと、あたりまえやんか。遊び半分やったらエリオやとしても許さへんよ」
「そ、そんなことありません! 僕は、本気です!」
「やったら、なんも問題あらへん」

 そして、再び楽しそうに微笑むはやて。そんな彼女の態度に、エリオは戸惑うしかない。
 そこへ、今まで黙したまま微笑を浮かべていたなのはが、エリオに声を掛ける。

「ねぇ、エリオ」
「は、はいっ!」

 思わず背筋を正して、なのはの方に視線を送る。
 はやてとは違い、なのはの方にはやはり一言あるのかと身構えるが、彼女もやはり微笑みは絶やさぬまま、

「フェイトちゃんのこと、ちゃんと幸せにしてあげないと許さないからね」

 その言葉で、エリオは悟った。
 エリオの思いを彼女たちは正しく理解してくれているという事を。

 遊びなんかじゃなく、その場限りの感情でもなく、フェイトが好きだという思いを。
 だから、彼女は願ったのだ、フェイトが幸せになる事を。

 また、勇気を分けてもらった気がした。

「も、もちろんですっ! あ……でも、それはなんというか、もしうまくいったらで、あ、いや、もちろんフラれてもフェイトさんには幸せになって欲しいから努力しますけど――」

 とはいえ、さすがにそれは言いすぎではないかと思う。
 実際のところ、エリオは告白することに迷いは無いが、それが確実に上手くいくとは思っていない。

 なにせ、それを決めるのはフェイトだ。まだ告白さえなしえていない自分が、幸せにしてやるといったところで無謀なこと極まりない。
 彼女からしてみれば、自分はやはり子供で、被保護者の少年でしかない可能性のほうが高いのだ。

 もちろん、そういった結果もエリオはまっすぐ受け止める気でいるし、フラれたとしてもこの気持ちに変わりは無い。
 だから、なのはの言葉は時期尚早に過ぎると思うのだが――エリオの言葉になのは達は不服であるらしい。

「もう、エリオがそんな弱気でどうするの? フェイトちゃんは芯は強いけど大人しいところがあるんだから、エリオがしっかりしなくっちゃ!」
「せやせや、オレが幸せにしてやるから、ついて来い、くらい言えへんでどーするんや!」
「え、ええ……?」

 そう言われても、自分の気持ちを受け入れてくれるかどうかはフェイトさんの意思が尊重されるべきだろうにと、エリオは思い戸惑いの声を漏らすが、瞬間ものすごく鋭い視線で睨まれてしまう。

「せ、誠心誠意努力しますっ!」

 そんな言葉に、なのは達は暫く不満げな視線を隠しもせずにエリオの事を見つめていたが、

「まぁ、あんまり苛めすぎてもアレやし……まぁ、後はエリオの頑張りに期待しようかな」
「か、からかわれてたんですか……僕は……」

 くすくす、と微笑む彼女達の姿に、呆れ混じりにエリオは呟く。
 だが、そんな彼の言葉になのははゆっくりと首を横に振る。

「違うよ。からかったんじゃないよ。けど、最初っからダメだった時の事を考えてちゃいけないよ。フェイトちゃんもだけど、エリオもいっぱいいっぱい幸せにならないといけないんだから」
「なのはさん……」
「頑張りぃオトコノコ。んで、二人でしっかり幸せになりぃ」
「はやてさん……」

 二人の言葉を確かに自分の胸に刻み込みながら、エリオは立ち上がる。
 大切な勇気を彼女達からは確かに受け取った、ならば、あとはそれを成し遂げるだけだ。

「はい、絶対にフェイトさんを幸せにしてみせます。僕もきっと一緒に」

「フェイトちゃんやったらさっき“誰か”を探しに出て行ったで、しっかり見つけてきぃ」
「頑張ってね、エリオ」

「はい、いってきます!」

 そう言って、エリオはその場を後にした。


 ●


 走る。

 走り続ける。目的地を知りもしないのに、走り続ける。

 ただ、自分の思いだけを胸に秘めて走り続ける。

 相手が今どこにいるのかも解らない。

 それでも、ひたすらに駆け抜ける。

 ただ、会いたいと。

 それだけの、願いを込めて。

 その姿を滑稽だと笑う者がいるだろうか?

 肩で息をして、苦しそうに、それでも必死に走り続けるものの姿を嘲笑う者がいるだろうか?

 いやしない、そんなものはいやしない。

 大切な人を思って駆ける人の姿は、どうしようもなく美しいのだから。

 走る。走る。走る。

 想い人の残滓を辿るように、求めてやまない人の影を追うように、好きな人と――出逢う為に。

 だから、その邂逅はけして偶然なんかじゃない。

 二人がただお互いを求め続けた結果――こうして二人は出逢った。


 ●


「フェイト……さん……」
「エリ……オ……」

 邂逅は本当に唐突の出来事だった。
 気づけば二人はお互いにそこにいた。

 まるでそれが運命でもあったかのように、そこにお互いの想い人の姿があった。
 言葉は出ない、ただ疲れきったような荒い吐息が続く。

 二人とも、全力で走ってたのだろう。
 意味もなく、ただ逢いたい人に逢うために。

『あ、あのっ――』

 まるで示し合わせたように、第一声が被った。
 続く言葉は当然のようになく、気まずい沈黙だけがあたりに漂う。

「エリオが、その悩んでるって聞いて、それで、そのっ……私、えっとね……」

 先に口を開いたのはフェイトのほうだった。どこかしどろもどろになりつつも必死に声を紡ぐ。
 そんなフェイトの様子を見て、エリオはどこか安心したように、優しく微笑む。

「はい……フェイトさんに聞いてもらいたい事があるんです。聞いてくれますか?」
「えっ……うんっ、もちろんだよっ」

「好きです。仲間として、家族として、一人の女性としてフェイトさんの事が誰よりも好きです」

 言葉は、あまりにもあっさりと、まるで挨拶でもするかのような自然さで紡がれた。
 けれど、それはエリオの偽らざる気持ちで――伝えたい想いそのものだ。

 恥ずかしがることなく、まっすぐにフェイトの瞳を見据え、言い切ったエリオではあったが、どうやらそこが限界だったらしい。
 フェイトの瞳を見詰め続けることが出来ずに、視線を逸らしてしまう。

 そして、再び沈黙が落ちる。
 今度は先程とは違う趣の、なんともいえない深い深い沈黙。

 どちらも次になんと言っていいか解らず、ただ時間だけが過ぎていく。
 今回、先に耐え切れなくなったのはエリオの方だった。

「あ、あの、いまのは……」

 先の言葉を撤回する気など無いが、さすがに唐突過ぎたかと申し訳ない気持ちになり、視線を上げるエリオ。
 だが、そこで見たものに驚きの表情を浮かべる。

 フェイトが――ただ呆然と立ち尽くし、それでも大粒の涙をぽろぽろと零すフェイトの姿がそこにあったから。

「え? うわぁっ! フェ、フェイトさん、ごめんなさい。僕は、その……」

 自分の告白がどのような結果を残すとしても、さすがにそれは予想外の事態だったのか、慌ててフェイトに声を掛けるエリオ。
 そこでフェイトも意識を取り戻したようにピクッっと背筋を振るわせる。

「えっと、その……嘘、だよね? だって、そんな……その……」

 それでも、未だに混乱しているのか、震える声でフェイトは紡ぐ。
 そんな彼女の言葉をどう受け取ったのか、エリオはフェイトにむけて差し伸ばそうとした手を止め、すまなさそうに呟く。

「嘘じゃないです……その、ご迷惑だって事は解ってましたけど、でも、それでも……」
「め、迷惑なんかじゃない!!」

 唐突にエリオの言葉が遮られる。
 必死なフェイトの言葉によって。

「フェ、フェイトさん……?」
「迷惑なわけ無いよ! でも、だって私はエリオの事が好きってちゃんと気づけて、でも、それでも無理なんじゃないかって、そう思って、なのに、それなのにこんな夢みたいなこと――」

 次々と溢れてくる感情をそのまま口にしているだけなのだろう、どこか支離滅裂で、でもそのままの自分の気持ちをエリオにぶつけるようにフェイトは言葉を紡ぎ続ける。
 涙はやっぱり零れ続け、それでも止めることなく。

 そんな、いままで見たことの無いフェイトの姿に、エリオはほんの僅かだけ戸惑いを覚えた。
 それでも、彼は意を決したように表情を引き締める。
 彼の中に在る気持ちが揺るぐことは無いのだろう。
 だから、エリオはフェイトの手を握り締め、

「嘘でも、夢なんかでもありません。僕はフェイトさんのことが好きなんです」
「エリ……オ……」
「だから、泣かないでください。好きな人が泣いてるのは……悲しいです」

 ぎゅっと、フェイトの手を握り締めるエリオ。
 そこにある暖かさが、本当の真実であると伝えるように。

 そして、最後にもう一度だけ伝える。

「好きです、フェイトさん」
「私も……エリオの事が好きだよ」


 ●


 隊舎へと続く遊歩道。
 誰もいない夜空に星が瞬く道を二人は並んで歩いていた。

「なんだか、結構遠くまで来ちゃってたね」
「普通なら、この時間にあんまり人が来る場所じゃないですから……でも、フェイトさんなんであんなところに?」

「え、うーん、なんでだろう? エリオはなんで」
「僕はフェイトさんを探してたら何時の間にか」

「愛の力かな……?」
「ぶほっ、な、なに言い出すんですか突然! っていうか、フェイトさん自分で言っておきながら照れないでくださいよ!」

「え、えっと……だってぇ……」
「恥ずかしいんならそう言う事は胸に秘めておいてください!」

「でも、それじゃあ伝わらないかなって」
「そんなこと、ないですよ」

「でも、エリオ、告白した時、絶対に振られるって思ってなかった?」
「そ、それは……だって、その……」

「だから、好きだってちゃんと私からも伝えないとって」
「わ、わかりました! で、でもその人前ではあまり……」

「う、うん、そうだね……あ、でも、なのはやはやてには伝えないといけないかな……」
「あー、そのごめんなさい」

「え? え!? なんで謝るのエリオ!?」
「あ、いや、ちょっとここに来る前にはやて部隊長達に捕まって……その、色々と聞かれたので……」

「ああ、それは……で、でも大丈夫! 別に悪いことしてるわけじゃないし」
「で、ですよね……ああ、あとキャロにもちゃんと伝えないと……」

「キャロ? なにかあったの?」
「はい、キャロのおかげで、こうしてちゃんと告白する事ができましたから」

「そっか、キャロが……でも、謝っちゃダメだよね」
「……フェイトさん?」

「ううん、なんでもない。しっかりしなくっちゃって思ってね」
「そうですね……その、きっと幸せにします。フェイトさんのこと。まだまだ力不足かもしれませんけど」


「エリオ……うん、私、幸せになるよ。きっと、絶対に」


 二人は歩いていく、帰るべき場所へと向かって。
 そんな二人の手は、しっかりと繋がれていた。





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