魔法執事リリカルグリフィス 第49話 驚愕! 今明かされる真の黒幕。彼女の名は――


 前回までのあらすじ!

 ある日、不思議なメガネを拾い、魔法執事となったグリフィス。
 彼は立ちはだかる強大な敵『ナンバーズ』や『祝福の風団』に狙われながらも、その奉仕技で次々にご奉仕していく。

 そして、ついに祝福の風団の首領、八神はやてにご奉仕したグリフィス!
 これでようやく長い、長い主を持たぬ日々に終わりが訪れるかと安堵した時、はやての口から衝撃の事実が明かされる!!

「ふふふ、うちらはある御方からのご命令によって動いとる。あの方を倒さぬ限りアンタに安息は訪れへん!!」

 そんな言葉を証明するかのように、グリフィスの目の前に最強最後の敵が現れる。
 果たして、彼女の正体とは!?

 そして、グリフィスに仕えるべき主は本当に見つかるのか!?
 いま、最後のご奉仕の火蓋が切って落とされた!!





「ま……まさか貴方は……」

 爆発と共に舞い散った粉塵の向こうに佇むその姿に、グリフィスは見覚えがあった。
 だが、そんな筈が。彼女がここにいる筈がない。
 必死に己にそう言い聞かせるグリフィス。しかし、それは彼の願望でしかなく、現実はどこまでも無常だった。

「ふふふ、立派な執事になったわね。グリフィス」
「――――母さん」

 収まる粉塵の向こうに居たのはグリフィスの実の母、レティ・ロウランその人だった。

「なぜ……貴方が?」
「ふふふ、質問の仕方が不明瞭ね。なぜ私がここにいるのか。なぜ今こうして対峙しているのか。なぜナンバーズや祝福の風団を利用し、貴方を倒そうとしたのか……貴方が聞きたいのはどれかしら?」

 妖艶に微笑むレティ。だが理由などどうでもよかった。ただ本当に彼女が真の黒幕であった事がグリフィスには何よりの衝撃だった。

「まさか、母さんが裏で糸を引いていたなんて……僕は今までいったい何の為に奉仕してきたんだ……」

 ガクリ、とその場に膝を付くグリフィス。
 そんな彼の耳にレティの高らかな笑い声だけが響く。

「何のため……? 決まっているじゃない! 貴方を最強の執事に育てるためよ! ナンバーズや祝福の風団は全てその為の生贄にすぎない。そして貴方は私の期待に応え、最強の執事となった!! さぁ……その力を持って、私にご奉仕しなさい!!」
「できない……僕にはそんなことができやしない!」

 首を横に振りながら、激昂の言葉を吐き出すグリフィス。その顔には苦渋の色が満ちている。

「貴方ならできるわ! さぁ、ご奉仕してみなさいグリフィス!」
「実の母親なんですよ……? そんな相手に奉仕など、できるわけがない……奉仕とは、主の為に身も心も仕える行為、そこに肉親の情などあっては、奉仕なんてできるわけがない……」

 今までの数々の戦いで、ありとあらゆる相手にご奉仕してきたグリフィスだからこそ、実の母相手に奉仕することなど出来ないと解っていた。
 己の心情を吐露するグリフィス。だがレティはどこまでも冷徹にメガネのレンズを光らせたまま彼の姿を見下ろしていた。

「……失望したわ、グリフィス。奉仕のできない執事に用は無い。消えなさい、貴方にもう用は無いわ」

 その言葉と同時に、グリフィスが掛けていたメガネがその身から弾かれるように飛んだ。綺麗な放物線を描き、レティの手元に落ちるメガネ。同時にグリフィスの身体から急激にバトラーエネルギーが失われていく。

「なっ!? リリカルメガネが!? ……な、なんでこんなことが」
「ふふふ、言ったでしょう。始めからこれは私の計画だったの。そう、貴方がこのメガネを拾ったことすらも私の計画だったのよ!!」
「は、始めから……僕が魔法執事になったことすらも貴方の思惑だったというのか……」

 体中から力が消えていく。リリカルメガネを失ったグリフィスはもはや魔法執事としての力を持たない、ただの准陸尉だ。もはや奉仕する術すら失った彼にできることは――何も無い。

 すべてを失い、絶望し、もはや立ち上がる気力すらグリフィスには無い。
 そんな彼に、レティの無慈悲な声が投げ掛けられる。

「さぁ、ゆっくりおやすみなさいグリフィス! アフタ・ヌーン・ティィィィ!!」

 レティからグリフィスの最も得意とする奉仕技アフタ・ヌーン・ティーが放たれる。
 もはや魔法執事としての能力を全て失ったグリフィスにはそれを防ぐことも避けることも出来ない。
 そんな気力すら、もはやグリフィスには湧かなかった。
 ただ呆然と迫り来る黄金色の香りに身を任せようとするグリフィス。だが、その瞬間――

「うおおおおおおおおおおおおっ!」

 裂帛の咆哮が木霊する。気付けばグリフィスの眼前に大きな背中が迫り来るアフタ・ヌーン・ティーを完全に受け留めていた。

「……私のアフタ・ヌーン・ティーはグリフィスの十倍の威力、それを受け切るだなんて――いったい誰!?」
「ふっ……十倍だと? グリフィスのアフタ・ヌーン・ティーはこれより数段凄まじかったぞ」

 口の端に微笑みを浮かべる偉丈夫。それはかつて祝福の風団四天王と呼ばれたひとり。盾を冠する彼の名は―― 

「ザフィーラ!? そんな君はバトラーコアを砕かれたんじゃ」
「ふふっ……視の淵から蘇えってきたのさ」
「おのれっ、小癪な。くらえダスト・トゥ・ダスト――」

 そんなグリフィスとザフィーラにレティは再び百八の奉仕技のひとつ、ダスト・トゥ・ダストを放とうとする――が、それを遮る銃声が鳴り響く。
 奉仕技の発動の寸前、放たれた弾丸はレティの握るメガネにあたり、宙に弾かれる。

「――くっ、いったいだれっ!?」
「おっと、怒らせちまったかい。なぁに、名を名乗るほどのもんじゃねえさ」
「君は……仮面アニジャーV3!?」

 遠く離れた絶壁の上、そこにリリカル狙撃銃(非殺傷設定)を構える仮面の男の姿があった。彼こそが仮面の妹魂戦士。技の一号と力の二号から妹を愛する心を受け継いだ仮面アニジャーV3である。

「ほらっ、さっさと目を覚ませグリフィス。おまえが教えてくれたんじゃねえか! 奉仕とは――人を愛することなんだって!!」
「そう、奉仕とはただ仕えることなどではない。その人を愛し、その人を敬うこと。おまえはそれを私に見せてくれたではないか!?」
「ザフィーラ……仮面アニジャーV3……」

 友の……かつては奉仕を交し合った強敵の言葉に、グリフィスは顔を上げる。
 その視線の先には、宙を舞うリリカルメガネ!

「くっ!! 無駄よグリフィス! 貴方には奉仕などできないわ!」
「させるかぁ! グリフィスを倒したくば私を倒してからにして貰う!」
「ここは俺に任せて、行くんだ! グリフィス!」

 リリカルメガネを追うグリフィスを阻止しようとするレティ、それを更にザフィーラと仮面アニジャーV3が遮ろうとするが――

「無駄よ! リム・ジン・ハイヤー!!」

 強力な執事技リム・ジン・ハイヤーがザフィーラ達をなぎ払う。だが、派手に吹き飛ばされながらも彼等は薄く微笑むのであった。

「待たせたな、母さん――」

 なぜならば、そこにグリフィスがいた。
 いや違う。そう、今の彼の名は――魔法執事リリカルグリフィス!



「僕の奉仕は蕩けるぞっ!」




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