魔法少女リリカルなのは 星を砕く者 第17話 始まりの終わり(2)




 注:今回の話には残酷な描写が含まれますので、苦手な方はご注意ください。






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『第一次融合実験開始、被検体の意思を残したままの融合に成功』


『融合から三日が経過。言語による意思疎通が可能。肉体、精神共に構造に異常なし、以後の経過をみる』


『×日経過。被検体が事故により負傷する。右腕部を過失する重症ではあったが、二十六分後に再生する』


『融合の影響か、細胞に異常発生。各内臓器官が腫瘍化する』


『細胞の増殖は留まることなく腫瘍は外皮にまで到達。肉体は既に原形をとどめていない。だが実験に影響無しと判断』


『通常の融合実験と同時に、再生機能の検証を開始する。副産物的な事象だが有用な実験結果を残してくれるものと期待』


『解体実験開始。四肢切断による再生可能域の検証を行う。概ね再生は確認されたがその上で形状の変化が確認される。ユニゾンデバイスとの身体情報の齟齬が発生している模様。要検証』


『■■実験開始。■■を摘出するも生命活動に問題なし』


『■■実験開始。■■の切断を行う。通常通り再生が行われるが、顔面部に形状の変化は見られず。要検証』


『■■実験再開。■■部の変化が見られなかったことから重点的に検証。■■を剥離、復元を確認。■■■を摘出。復元を確認、しかし視力低下現象が発生。■部を切断。復元を確認。なお声帯に異常発生』


『■■■■。■■の■■を■■■。■■■■するも■■■であることから、以後の経過を見る』


『■■■■■■■。■■■■■、■■■■■■。■■■■■■――』



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 シリンダーが展開すると同時に無数のウインドウが開き、そこに存在するものがどういった経過によって造り上げられたのか、そこには記されていた。
 だが、アルバートはそれを認識する事が出来ない。
 彼はただ、シリンダーの中に存在するものに目を奪われ続けていた。
 だが、目の前に存在するモノが、なんなのか、アルバートに理解することはできなかった。
 シリンダーのなかには保護液だろうか、薄い緑色の溶液が充満しており、その中に“ソレ”は浮いていた。
 自然界に存在しない――してはいけないソレに対して、例える言葉は見つからない。
 だが、あえて言葉にするのならば、ソレは肉塊、としか呼べないような異形の代物だった。
 常人では直視することも叶わない、ただひたすらに嫌悪感を引き起こすような異形の存在が、そこにはあった。
 ソレが元々、人間であったことを示すのは、中央部分に埋もれるようにして存在する人の顔だけ。
 それが、かつて自分の愛した。いや、今この瞬間も愛し続けているただ一人の女性であることを、アルバートが悟ることが出来たのは果たして奇跡だったのだろうか。
 幽鬼のような足取りで、アルバートはゆっくりとシリンダーに歩み寄ると、ガラスの表面に指を這わせる。
 返ってくるのは冷たく固い感触だけ。
 だが、その動きに反応したのか、ソレは胎動を始めたかと思うと、閉じられた瞼をゆっくりと開いた。
 目と目が合う。ソレは最初、ほんの僅かだけ表情に動揺を浮かべたが、すぐに目を弓なりにしならせたかと思うと、困ったような笑顔のままで何かを囁いた。
 声が、アルバートの元に届くはずも無い。たが、口の動きからソレがなにを伝えたがっているのか、アルバートにはすぐに解った。
 ごめんね。とソレは囁いていた。
 涙が、とめどなく溢れてアルバートの視界を歪ませる。湧き上がる感情は、制御することも出来ずにただアルバートの身を慙愧と後悔の念で灼き尽くしていた。
「やれやれ、ここは立ち入り禁止区域なのですが、困ったお客人だ」
 そんな彼の背後から、聞き覚えのある声が響く。
 振り返った先、そこにいたのはトラバントと彼を守るようにデバイスを構えた魔道師たちの姿だった。
 いつの間にか、アルバートと共に居た子供達は彼等に捕らえられている。そして残った魔道師たちも今アルバートに向けてそのデバイスの先端を差し向けていた。
「貴様っ――」
「言ったはずですよ。ミラさんの“遺体”は存在しないと。なにしろこうして生きていらっしゃる。それを遺体と呼んでは可哀相だ」
 言葉にならない怒りがアルバートに襲い掛かる。殺意で全てが塗りつぶされていく。
「あ、それと、こうも申しておりましたよね――――お見せできるような姿でもない、と」
 殺意が、弾けた。
 トラバントを殺すべく、アルバートは徒手空拳のまま駆け抜ける。
 だが、既に戦闘態勢に入ったままの魔道師たちにそれで敵うわけもない。その途上で幾重ものバインドに絡め摂られたアルバートはそのまま無様に地面へと叩きつけられる。
 四肢の自由を奪われ、しかしアルバートの殺意は僅かにも揺るぐ事無く、歯をむき出しながら叫ぶ。
「貴様ッ、キサマッ殺してやる、絶対に殺してやる!!」
「陳腐な言葉ですね。あまりにも品性が足らない」
 大きく溜息をつきながら、トラバントは芝居じみた動きでやれやれ、と呟いた。
「そもそも、なにを憤っているのです? 私たちはこうして彼女の生命維持を優先しているというのに?」
 自分達は善行を行っている、と。それを疑うことの無い口調でトラバントを続ける。
 彼からしてみれば、アルバートの憤慨する理由が解らないと、本気で言っているのだ。
「この狂人がっ……貴様は、弄んでいるだけだ。ミラをっ、私の妻をッ――それを断じて許すわけにはいかない」
「はぁ、これだから大局を見据えられない兵士は……よいですか、これはこれからの管理局の未来を支える技術の根源なのですよ――」
 悦に浸るように語り始めるトラバント。
 プロジェクト・スターディーラー。それこそが、この計画の真の姿だった。
 “星と繋ぐ者”と呼ばれるその計画は魔力硬化症の治療でも、暴走ユニゾンデバイスによる超人兵士作成の為の物ではない。
 あくまで、それらは過程でしかない。魔力硬化症患者の治療にいたっては、仮の名目でしかないのだ。
 その正体は、人、ユニゾンデバイス、そして“星”との融合を志した計画だった。
「星との……ユニゾンだと?」
 信じられないと、アルバートは呟く。そんなものは夢物語と断じてもいい戯言にしか過ぎない。
 だが、トラバントは、彼だけはその戯言を信じた道化師であった。
「なぜかね? 星を一つの生命体として考える理論は昔から存在する。ならば、その生命体とユニゾンデバイスを解して融合できないと、なぜ言い切れるのかね?」
 確かに、理論的には生命体との融合が可能なユニゾンデバイスであるならば、確率的になしえないことではないかもしれない。
 だが、そんなものは所詮、机上の空論だ。現状では人との融合もままならないユニゾンデバイスにそのような事を実現させる力は無い。
 それに加え――
「そんなことをして、何の意味があるっ!」
 アルバートの当然の疑問。だが、トラバントは出来の悪い生徒を見るような侮蔑の視線で這い蹲るアルバートを見下すだけだ。
「ここまで言ってまだ解らないのかね? ユニゾンデバイスを介して人と星が融合するということは、その星の全権を人が掌握できるということではないか」
 もし、それが可能ならば、確かにそれは理想の技術となりえるかもしれない。
 惑星改造により、人が居住可能である星を意のままに創りあげることができるだろう。
 つまるところ、星との融合を果たした人間は――その世界の神たる存在となることが出来るのだ。
「なんとも素晴らしい技術ではないかっ、これにより一体幾億の人間が救えると思うかね。まぁ、他にも利用価値は無いでもないが、そちらにはあまり興味が無い」
 自分の興味あることだけを自慢げに語るトラバント。
 だが、そのような言い分がアルバートに届くはずも無い。
「そんな……幻想に憑かれて、貴様はミラをこんな姿にしたというのかっ!」
 いかな理由であれ、アルバートの賛同を得られる筈が無かった。
 牙向くように吼え猛るアルバート、そんな彼をトラバントはどこまでもつまらなさげに見下ろしたかと思うと、もはや語り聞かせるのも億劫と言わんばかりに、アルバートに背を向けた。
「もういいでしょう。その男は献体保存庫にでも収容していなさい。もしかしたら役に立つかもしれない……ああ、そうそう、その子達もそろそろ適応試験を始めても良い頃合でしょう、実験室に連れて行ってください」
 それだけを言い残し、部屋から出て行こうとするトラバント。
 その背中に向けて、アルバートは喉が潰れるのも構わないとでも言うかのように、力の限りに叫び続ける。
「おまえは殺す。絶対に殺してやる。いや、貴様だけではない、すべて、何もかも、ミラを見捨てた者など――



 死ね、すべて死ねっっ!」



 ●



 そして、幾許かの時が流れた。
 それが一瞬のことか、それとも幾年月もの時間が流れたのか理解する術はアルバートには無い。
 彼の意識が再び覚醒し、始めて感じたのは鼓動の音。
 ドクン、と心臓の脈打つその音に彼は目を覚ました。
 初めに意識したのは、自分が暗く狭い空間に存在しているという事実。
 視界は瞼を開こうとも、すべて漆黒で覆われ、耳に届くのは重厚な機械音だけ。
 その音が一際高くなったかと思うと、アルバートは排出される保護溶液の波に攫われるようにして、暗闇の世界から解放された。
「がっ……けはっ……な、何が……」
 困惑と焦燥がアルバートを襲う。
 彼がそれ以前に記憶していたのは、トラバントの手下によって自分が棺桶のような機械に詰め込まれたシーンだけだった。
 それ以降の記憶は無い。意識はあっさりと途切れ……気づけば、自分は今こうして目覚めたところであった。
 その間にどれほどの時間が経過したのか、筋肉は衰え、まともに立って歩くことさえできない。
 それでも、アルバートは出来る限りの情報を集めようと、周囲を見回した。
 暗い、空間だ。だが、ミラのいた部屋とはまた違う、それよりももっと広大な空間。
 周囲にはアルバートが眠っていた棺桶のような形をした機械が等間隔にいくつも並べられている。
 その様子はまるで地下墓地か何かのようだ。
 それ以外はの特別な情報は、今のところようとして知れない。
 周囲には人影はなく、ただ機械が静かに作動する駆動音が断続的に響くだけだ。
 なにが起こったのか、アルバートに理解することは出来ない。
 自分がどのような境遇に放り込まれたのか、アルバートは大体予測できている。
 この場にある機械群の中には、おそらく閉じ込められた人間達がそれぞれ詰め込まれているのだろう。
 トラバントの進める研究を進める為の実験材料として、だ。
 そして、自分もその列席に加えさせられた――その筈だった。
 この施設の作られた真の目的を知ったアルバートに残された道は、もはや実験材料として無為に消費させられるか、このまま永遠の眠りにつき続けるか……そのどちらかしか残されていなかった。
 五体満足のまま再び目覚める可能性は、ゼロ。
 だが、今のアルバートにはそのありえない可能性が訪れていた。
 そこから考えられるのは、今、トラバントが想定できなかった、ありえない事態がこのガーデンで起こっているという可能性。
 それを証明するように、いくら待っても、こちらを拘束しようと飛び出してくる魔道師たちの姿はない。
 ならば、好都合だと――アルバートは考える。
 偶然の結果とはいえ、自由を手に入れられたのならば、アルバートには為さねばならないことがある。
 ミラを、助けること。
 それを成し遂げる為にも、まずはトラバントを確保しなければならない。
 身体の調子は未だに最悪ではあったが、いつまでもこの場で大人しくしているわけには行かなかった。
 足を引きずりながらもアルバートはこの部屋からの脱出を試みる。
 壁伝いに調べていくと、出口はあっさりと見つかった。そのうえロックも掛っていない。セキュリティシステムが死んでいるのだ。
 やはり、この施設で何か不測の事態が起こっている。
 しかし、今はそれを考えている時間は無い。与えられた好機を最大限に生かすだけだ。
 周囲を警戒しながらアルバートは長い廊下へと躍り出る。天井の明かりは完全に消えており、道を示すのは足元に灯る非常灯のみ。
 メインの電源が切れているのだろう。人の気配がないことを確認しながらアルバートはゆっくりと歩を進めた。
 周囲に漂うのは嘘のような静寂だけだ。人が生活しているような気配は微塵も存在しない。
 ここにきて、アルバートはこの施設を襲った事態の異常性を配慮し始めた。
 単なる事故の類ではない、もっと深刻な事態がこの場を襲っている。
 より慎重に、歩を進めるアルバート。そんな彼の耳に一つの足音が響いてきた。
 慌てたように響く足音をつれて、その男は廊下の突き当たり。曲がり角からその姿を現す。
 当然であるとはいえ、白衣を着込んだその格好はこの施設の研究者であることを示している。
 唐突なその事態に、体が緊張で強張る。とてもではないが、現在のコンディションではまともな戦闘も行うことは出来ない。
 彼に戦闘能力がないとは言え、待機している魔道師たちに連絡を入れられたら、そこでお仕舞いだ。
 身体にどれほどの負担が掛るかはわからないが、ブーストを掛けて一撃で葬るか――思考すると同時に行動に移ろうと身を沈ませるアルバート。
 だが、それよりもはやく、突如現れた男は、まるでアルバートに救いを求めるようにこちらに手を伸ばしてきたかと思うと、
「た、助け――」
 それだけを呟いて、その場に倒れ付した。
 何が起こったのか、理解することは出来ない。だが、いくら待っても再び男が動き出すことも、新たな闖入者が姿を現すことも無かった。
 できるだけ、素早く動けるように注意しながら、アルバートは倒れ付した男の元へと近づいていく。
 ほんの僅かに歩を進めたところですぐに気が付いた、すでに男は絶命しているということに。
 その背には、深い切り傷が刻まれており、血臭が辺りには漂っている。
 そして、気づいた。死んでいるのはその男だけではないということを。
 廊下の突き当りを曲がれば、そこには屍の山が築かれていた。誰も彼もが一撃の下に切り伏せられ、長い廊下は彼等の血によって壁も天井も赤く染め上げられている。
 そして、その屍の中心に――ひとりの少女がいた。
 見覚えのある少女だ。そう、このガーデンに赴いた時に話した子供達のうちの一人。双子の少女の片割れ。
 だが、記憶にあるその少女とは明らかに違う点がある。
 ひとつは、その右腕が存在しないということ。その代わりとでも言うかのように、少女の右腕があった場所にはまるで腫瘍に犯されたかのような嫌悪の感情を呼び起こす、剣の形をした物体が生えていた。
 そして、その顔。
 少女の顔の右半分に、それは存在した。
 小さな人間とでも言うのか、上半身だけを露出させる羽根を生やした妖精のような人形が、彼女の左眼窩を住処として確かに存在していた。
 その人形が、こちらを向く。目に付いたもの全てを斬殺するべく、殺意の意思を持って。
「アハハハハハハッ!!」
 本体である少女の口が開き、感情の見えない哄笑を響かせる。同時に少女は右腕の大剣を振り被り、アルバートの方に向かって疾走を開始する。
 殺られる、本能が警告を鳴らすが対応が間に合う速度ではない。
 致命傷だけは避けようと身を逸らすが、どこに当たろうともその巨大な大剣で切り裂かれれば致命の一撃となるだろう。
 所詮、悪あがきにしか過ぎない行動だ。それを覚悟しながらも――しかし、痛みは何時までたっても訪れることは無かった。
 見れば、少女の斬撃はアルバートの直前で完全に停止していた。
 何が起こったのか、判断する間もなく、少女はあっさりとその剣を引いたかと思うとアルバートに背を向け、何処かへと向けて歩き始める。
「ま、待て。待ってくれ、君は一体……」
 その背に向けて、アルバートは制止の声を掛けるが少女は無反応のまま姿を消す。
 なにが起こったのか理解することなど出来ない。ただ、あの少女が手心を加えられるような精神状態でなかったことだけは確かだ。
 ならば、何が彼女の剣閃を留めたのか――情報があまりにも乏しい今、思考しても仕方の無いことなのかもしれない。
 思考を切り替える。あの少女を放って置くことには躊躇いを覚えるが、今、アルバートにとって最も優先するべきは――ミラを助けること。
 余計な感情はすべて排除する。そうしなければ目的を達成することなどできやしないのだから。
 再び行き所を定めると、アルバートは屍の山を踏み越え、目的の場所へと歩き始めた。
 その背後にずっといた、黒髪の小さな少女にアルバートが気づくことは遂に無かった。



 ●



 アルバートがたどり着いた先、ミラが“保存”されている部屋の中には既に先客がいた。
「……なんだ、君かね、随分と久しいな。何年ぶりだね?」
 その老人、トラバントは一瞬だけ扉から入ってきたアルバートの方を眺めたかと思うと、酷くつまらなさげに、そう呟くと視線を前へ戻す。
 ミラがいる、シリンダーの方へと。
「最後は私の作った実験体のどれかに殺されるものだと期待していたが、随分とつまらない結果になってしまったな」
 その言葉には、ある種の諦観というべきか。死というものを受け入れているかのような、そんな潔さが現れていた。
 だが、トラバントの精神状態など関係ない。
 アルバートに湧き上がってくるのは制御しようの無い暗い殺意だけだ。
 今すぐ、この場でこの男を殺してやりたい。
 そんな情動に従い、動こうとする身体を歯を食いしばるようにしてアルバートは抑え込む。
「ミラを……元に戻せっ」
「無理だな」
 アルバートの言葉に、トラバントは間髪いれずに答える。
 瞬間、体が自動的に動いた。トラバントの白衣の襟を掴み上げ、そのままシリンダーに叩きつける。
「出来るか、出来ないかなど聞いていない……私は、元に戻せと言ったんだ」
 そのままトラバントを絞め殺さんばかりの勢いで問い詰めるが、彼は全てを諦めたかのような瞳で、ただ酷薄に笑うだけだ。
「ミラ・リンドブルムは死んだよ。つい、先程のことだ」
 それは、どこまでも淡々と呟かれた。
 その言葉がなにを意味するか、アルバートは理解していながらも受け入れることが出来ない。
 それが、すべての希望を打ち砕く真実なのだから、受け入れられるはずが無かった。
「いくら私でも、死んだものを生き返らせることなど不可能だ。君は私をただの夢想主義者だとでも思っているようだが、私にも出来ることと出来ぬことの分別はあるよ」
 聞こえない。
 そんな言葉は聞きたくない。
 もう、絶望を味わうことはたくさんだった。
 ミラの死を知らされ、ミラの変わり果てた姿を見せられ……そんなのは、もう嫌だった。
「生き返らせろっ、生き返らせてくれ……頼む、ミラを……」
 理解できぬまま、アルバートは懇願の言葉を投げかけていた。
 もはや、そうしなければ自分が生きていることすら叶わないのだから。
 だが、トラバントはそこで始めて表情らしいものを見せた。
 それはどこまでも侮蔑しきったような顔で、
「バカかね、君は?」
 それが、トラバントの最後の言葉となった。
 頚椎の外れる音が響き、それだけでトラバントは物言わぬ、ただの骸と成り果てた。
 アルバートが、彼の首から手を離すと、それはどしゃりと床に崩れ落ちる。
 ミラの、自分の人生を狂わせた男の生命を絶ったというのに、そこには何の達成感も存在しない。
 カラッポの心のまま、アルバートはトラバントの遺骸を乗り越え、その脇に存在する端末に手を伸ばした。
 どこまでも機械的な動作で、操作を続ける。
 するとシリンダーのガラスが鳴動を初め、展開を開始する。中に詰まっていた保護溶液が溢れ出し、足元を濡らすがそんな些細なことはどうでもよかった。
 すべて、どうでもよかった。
 その流れに合わせる様にして、ミラがシリンダーの中から零れ落ちてくる。
 すでにその姿は原形をとどめていない。しかし、アルバートにとってそれは愛する妻以外の何者でもなかった。
 優しく、その体を抱きとめる。そこだけはかつての面影を残したミラの表情は安らかに瞼を閉じたままであった。
 以前のように、その瞼をあけて、こちらを見てくれることは無かった。
 ただ、眠るようにして、そこに存在していただけだった。
「うっ……うっ、あああああああああああああああああああっっ」
 慟哭が、悲しみだけを乗せた慟哭が響き渡る。
 ミラの遺骸を抱きしめ、アルバートはただ慟哭する。
 そんな悲しみの声に、呼応するかのように蠢くものがあった。
 ミラの身体。その末端部分がすぐそばにいるアルバートに這い寄るように胎動を始める。
 ミラが生き返ったわけではない。それは彼女と融合していた存在。暴走ユニゾンデバイスそのものだ。
 すでに生命活動を停止した宿主の代わりを求めて、それらはゆっくりとアルバートを覆っていく。
 それらに自分の身体が侵されていくのを自覚しながら、しかしアルバートはそれを何の抵抗もせずに受け入れていた。
 それがどのようなものか、アルバートは知らない。
 だが、それにより如何なる結果がもたらされようとも、既にアルバートにとってはなんの興味も湧かない。
 このまま希望の無い世界で生き続けるくらいなら、意思の無い、ただの人形になった方がいくらかマシだった。
 そして、ユニゾンが開始される。
 そうなれば、一瞬のうちにアルバートの意志は破壊され、ユニゾンデバイスの手足となる為の傀儡と化すだろう。
 そんな結果すら幸いと受け入れ、アルバートはミラの亡骸を抱いたままゆっくりと瞼を閉じる。
 その最後の瞬間、彼が垣間見たのは――どこかミラの面影を残す、黒髪の少女の姿だった。
「悲しい……の?」
 全てが止みに包まれた瞬間、そんな問いかけがアルバートの耳に届いた。



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 記憶がアルバートの中に奔流となり、溢れてくる。
 それは、このユニゾンデバイスが垣間見た記憶。そして、ユニゾンデバイスと融合していたミラが見ていた記憶だった。
 そこには、一瞬のうちに数多の人生を追体験する、走馬灯のようなビジョンをアルバートに与える。
 それは、魔力硬化症という病に苦しみながら、それでも精一杯生き続けたミラの記憶。
 それは、アルバートと出逢い、いつかそれが壊れる日が来るとしても、幸せに生き続けた記憶。
 それは、ガーデンで出逢った四人の子供達と過ごした優しい日々の記憶。
 それは、自らトラバントの実験体として暴走ユニゾンデバイスと融合し、絶え間ない苦痛に苛まれた記憶。
 それは、愛する夫との再会をただ喜び、悲しそうに微笑む一瞬の記憶。
 そして、黒髪の少女と過ごした、最後の記憶。
 喜びも、悲しみも、怒りも、楽しみも――すべてがアルバートの中に入り込んでくる。
 そして最後にアルバートの中にあったのは幾千もの言葉の奔流だった。
 それは様々な言語を用いて、アルバートに訴えかけていた。
 ありとあらゆる言葉は、すべてたった一つの意味を持ってアルバートを塗りつぶしていく。
 それが、この存在が辿り着いた最後の願いだった。
 それはたった一言――



 ――殺せ、と訴えかけていた。



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 融合が、終わった。
 彼はゆっくりと立ち上がる。その半身はバリアジャケットの形を為したユニゾンデバイスによって覆われてはいたが確かなヒトの姿を持った存在。
 だが、もはやそこにはアルバートと名乗っていた者は存在していなかった。
 そこにいたのは、たった一つの意思を成し遂げる為に存在し続けるだけの意思の塊でしかなかった。
 男が振り返ると、そこにはいつの間にか、異形をその身に宿した四人の子供達が、まるで命令を待つ人形か何かのように茫洋と立ち尽くしていた。
 ユニゾンデバイス側から得られた情報により、男はすべてを知りえる存在となっていた。
 だから、それらが自分の意のままに動く、ただの人形であるという事実も知っていた。
 それらを見回し、男はただ静かに呟いた。
「始めるぞ……」
 返事は無い、四人の子供達はただ主の言葉に従うだけの傀儡であるのだから、そのような応答は必要ない。
 だから、男は四人から視線を外し、背後にいた黒髪の少女へと視線を向け、宣言するように呟いた。



「全てに死を与える――――星を砕く物語を」



 こうして、物語は終わりの始まりを迎えることになる。



 ●



 そして、時間は現在へと



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 この星で行われた実験。それにより何が起きたのかを、ティアナは閲覧した情報から、その全容を知りえることができた。
 そこには、目の前の少女が何者なのかを示す情報もあった。
 いや、この少女こそが、この星で行われてきた実験のすべての結晶と呼んでも過言ではなかった。
 それでも、その事実を信じることが出来ずに、ティアナは少女に問いかけていた。
「もう一度聞くわ……貴方は何者なの。星を砕く者、なんて抽象的な答えじゃなく、あなたはどういった存在なの?」
 ティアナのそんな疑問に、やはり黒髪の少女は淡々と、自分の存在を定義する答えを朗読するように口にする。
「私は、自分の意思を残したままユニゾンデバイスとの融合に成功した被検体。ミラ・リンドブルムから創られた人造生命体――そして、星との融合を果たした存在」
 それは、ティアナの想像した通りの答えだった。
 プロジェクト・スターディーラー。
 星を繋ぐ者、と呼ばれた夢物語の実験は成功していたのだ。
 ティアナにとってあまりにも信じがたいことだが、それが目の前にいる存在だった。
 だが、今の彼女は違う。彼女は自分の事を【星を砕く者】と名乗った。
 それはつまり、この計画の“もう一つ”の使い方の為に、動いているということだ。
 惑星改造計画、スターディーラー。
 確かに、それが成功すれば世界を救う手立てになるかもしれない。
 だが、その裏側に存在するもう一つの利用方法は、まさに正逆。世界を滅ぼしかねない技術であった。
 それこそが、星を砕く者。プロジェクト・スターデストラクター。
 それを星を一つの兵器として見立てた、最強最悪の対次元世界兵器。
 構造は単純明快。一つの意思によって操られた星を、そのまま他の惑星にぶつけるという、ただそれだけの物にしか過ぎない。
 だが、それによる被害は尋常ではない。
 単純に惑星同士の衝突による消滅――“その程度”では済まされない。
 なぜならば、今現在この星はオーバーマジックフィールドによって異常なまでの魔力が充満している。
 それは果たして、いったいどれほどの魔力量なのだろうか。
 SSランク魔道師がそれこそ幾千、幾億集まろうが足元にも及ばない魔力をこの星は溜めている。
 そんな星が他の惑星との衝突によって崩壊すれば、そこに秘められた魔力はいっせいに開放。巨大な魔力爆弾となって炸裂。
 それは過去に類を見ない次元震――いや、彼の古代ベルカすら滅ぼしたといわれる次元断層の発生を呼び起こすこととなる。
 そうなれば同次元世界だけではない。周囲に数多ある次元世界を巻き込む崩壊をもたらす結果を呼ぶだろう。
 星を砕く者。それはまさしく、言葉どおりの意味を持つ、いや、それ以上の破壊を呼ぶ存在なのだ。
 その引き金となる少女が今、ティアナの目の前にいた。
 星の崩壊は、彼女の意思を持って行われることになる。
 それを阻止するもっとも確実な方法は、管理局が下した決定――複数基のアルカンシェルによる反応消滅により、完全に殲滅させるのが、妥当である。
 もしくは、少女が提唱したとおりに……星との融合を果たした、彼女の本体を殺害するか。
 星を動かすべき意思が存在しなければ、確かにその計画は破綻するだろう。
 だが、どちらの道を選ぼうとも、今のティアナに出来ることは無かった。
 目の前の少女はあくまで端末にしかすぎない。破壊することは不可能であるし、例え出来たとしても意味の無い行為だ。
 気になる点があるとすれば――自らの死を少女が望んでいるという事。
「あなたは、何を望んでいるの?」
 それが、ティアナには解らない。星を砕く者、と名乗っている以上、彼女は星の破壊を目的として動いているはずだ。
 そうでなければ、腑に落ちない点がいくつも存在することになる。
 いったい、彼女自身の目的はなんなのか。それを知らなければ、こうして会話していることすら無為な事である。
 だが、そんなティアナの問い掛けに、少女はやはりどこか定まらない瞳のまま、小さく呟く。
「人が死ぬと……悲しい、から」
 このまま計画が進行すれば、それこそ天文学的な人の命が消えるだろう。
 それはもしかしたら、悲しみすらも消失させるものなのかもしれない。
 けれど、それを悲しいと思うのはけして間違いではないだろう。
 そんな至極当たり前の、人間であるのならば当然のように抱く感情を、少女はそのまま言葉で告げる。
 だが、ティアナにしてみれば、少女がそんな倫理的な答えを返したことの方が、驚きである。
 もちろん、ティアナは少女の出自やその性格まで正確に把握しているわけではない。
 それでも、紡がれた言葉にはどうしても実感の無い、無為さが漂っている。
 少女の告げた言葉は、けしてそんな風に語れるものではない。
 言うなれば、信用に値しない言葉だ。少女の言葉をそのまま受け入れるほどティアナは純粋に出来ていなかった。
「残念だけれど、あなたは信用に値しないわ。なぜなら、あなたには何のメリットも無い。それなのに自分の死を望む奴の言う事をそのまま実行するほど、暇じゃないの」
 どこまでも冷徹なその回答。死が悲しいものだというのに、自らの死を軽く見すぎている少女の言葉に、ティアナは賛同するわけにはいかなかった。
 そんなティアナの言葉に、少女は静かに言葉を重ねる。
「私は……人じゃないから」
 それは、どこまでも無感情に囁かれる、どこまでも悲しい言葉だった。
 なぜ、少女がそのような結論に至ったのかティアナに知る由は無い。
 だが、人で無い自分が死んでも誰も悲しむことは無いと、その考えはどこまでも悲しいものに他ならなかった。
 しかし、それでもティアナは少女の願いを聞き届けるわけにはいかなかった。
 それでなくとも、この星はあと数時間もすれば跡形もなく消滅することになるだろう。
 最大の悲劇を止める為に、この星にはアルカンシェルによる砲撃が必ず降りかかる。
 それほどの手段をもってしても止めなければならない事態なのだから、それは当然の処置といえるだろう。
 だから、今のティアナの最も優先すべきことは星を砕く者の阻止ではない。
 仮初とはいえ、指揮官という立場にいるティアナには一刻も早く仲間達と合流し、この星から撤退しなければならないという至上命題が存在するのだ。
 それを非道と蔑まれようとも、それがティアナが成し遂げなければならない事なのだから。
 だが、そこまで考えたところで、ティアナは重大な見落としが存在する事に気づいた。
 放っておけば、それこそティアナの目的が根底から覆るほどの、とてつもない見落とし。
「アンタ……まさかっ、私の仲間にも同じように接触してるんじゃないでしょうね!」
 だから、ティアナは慌てたように少女に問いただす。
 それだけは、それだけはいただけなかった。
 だが、少女は何を問われているのか、いまいち理解できていないようで、僅かに思考するような間を空けた後、ティアナの質問に対して簡潔に答える。
「貴方以外に……一人だけ」
「だれっ、どんな奴っ!?」
 エリオや、キャロならばまだ救いようがあった。
 彼等にもまた、成し遂げなければならない最大の目的が存在する。少女の言葉に耳を貸す余裕は彼等にもまた存在しないはずだ。
 けれど、そんなティアナの期待を裏切るかのように、少女は今現在、別の場所で接触している者の特徴を呟いた。
「青い髪の、女の人」
 それは、最悪の回答だった。
 身体が痛むのも構わず、ティアナは失敗したと言いたげに頭を抱える。
 ティアナの考えていたこれからの行動計画がすべてガラガラと音を立てて崩壊し始める。
 もちろん、そのような奇態は少女の想定外のものだったのだろう。
 ただ、呆けたように少女はティアナが悩み苦しむ姿を見詰め続けるだけだ。
 自分が、何をしたのか。どれほどの過失を犯したのか、まるで解っていないのだ。
 だから、ティアナはそんな少女に向けて怨み言を放つかのように、たった一つの事実を語って聞かせた。
「アンタの願い、絶対に叶わなくなるわよ」


 それが、絶対不変の真実であるかのように、ティアナは呟いた。



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「――――いやだよ」
 日記に描かれていた内容、そして少女自身から告げられた言葉によりスバルはこの星で行われてきた事実の一端を知ることになった。
 ティアナがこの研究所の資料から手に入れた情報にくらべ、それはあまりにも断片的な情報でしかなかったが、そこに幾つも重なる深い悲しみが存在していたということだけは理解することが出来た。
 その上で、星を砕く者と名乗った少女は、自分のことを殺して欲しいとスバルに再度頼んだ。
 このままでは、自分は多くの悲しみを生み出してしまう。
 それを阻止する為に自分という存在を消滅させて欲しいと、少女は言った。
 だが、先述の言葉がスバルの答えだった。
 迷いなく、ためらう事無く呟かれたのは確固たる拒否の言葉。
「なぜ? このままだと、たくさんの人が死ぬ、あなたの大事な人や、あなた自身も死ぬかもしれない……それなのに、なんで?」
 少女の口から零れるのは、責めるのではなく、ただ確認したいが為に紡がれる言葉だった。
 少女の思考は、ある種の混乱を抱える事になる。
 感情というものが元から存在しない少女だが、一般的な知識――常識や倫理というものは持ち合わせていた。
 そこから導き出される答えは、幾通りかの答えを導き出していたが、スバルの紡ぎだした答えは少女にとってまったく想定外の言葉であった。
 ティアナのように、論理的に導き出された答えならば、納得がいく。
 しかし、スバルの答えはただ単に、少女の死を拒否するというそれだけのものでしかなかった。
 それは、少女にとってあまりにも理解不能な答え。
 ゆえに、少女は何故スバルがそんな結論を導き出したのかを知りたいがゆえに、そう問いただした。
 だが、スバルの口から紡がれる返事はやはり少女には理解できぬ類のものだった。
「それは、悲しい結末だよ。それで、たくさんの人が救われるのかもしれない。けど、それじゃああなたが死んじゃう。それは……とても、悲しいことなんだよ?」
「私は人間じゃあない。ただ、星を砕く為に生み出されたそれだけの存在でしかない。だから、私の死に対して悲しみは生まれない」
 スバルの根本的な間違いを正す為に、少女は言う。
 だが、それでスバルの思いを止められるはずが無かった。
「違うよっ! 人間だとか、そうじゃないとか……そんなんじゃないんだよっ。こうして言葉を交わせてるのに、そこにいるあなたが死んだら、悲しみは生まれちゃうんだよ!」
 スバルの言葉に、虚飾など一切無い。それは、真にそう思うことの出来るスバルだからこそ、紡ぐことの出来る真実の言葉だった。
 だが、少女はスバルのその言葉を受け入れるわけにはいかなかった。
 そうでなければ、自分の目的が果たされることは無いのだから。
「例えそうだとしても、私の死にたいして悲しみが生まれることはない、私はそういう存在なんだから」
 そうだ、私が死んでも誰も悲しむことはない。
 ありとあらゆる感情の消え失せたフェイス達が、悲しみという感情を持つことはない。
 フェイスレスも自分の死に悲しむことはない。いや、彼こそが星を砕く者としての自分の生を決定付けた存在なのだ。そこに悲しみは生まれない。
 そして、ミラは――――もういない。
 自分の死にたいして、悲しみを覚える人間は、もはや存在しないのだ。
 ならば、死を望むことに抵抗はない。生にしがみつく事に意味なんかない。
 それなのに、だというのに、スバルは悲しそうに、辛そうに少女に向けて呟いた。
「私が…………悲しいよ。それじゃあダメなのかな?」
 それは、少女にとって信じられない。信じてはいけない言葉だった。
 スバルがなぜ、そんなことを自分に言うのか理解することが出来ない。
 少女とスバルの関係は、ほんの僅かだけ会話したという、ただそれだけの関係でしかない。
 スバルが自分の死を悼むような理由など、そこには存在しない。
 ならば、紡がれたその言葉はただの戯言にしか過ぎないはずだ。
 なのに、スバルの瞳はどうしようもないほど悲しそうに、それでもただまっすぐ少女の方を見詰め続けていた。
 そこに虚偽や装飾の入り込む隙間はない。そこにあるのは確かな真実しか存在しなかった。
 ティアナが、言っていた意味がここでようやく少女にも理解することが出来た。
 いけない。これは自分の目的を阻害するファクターとなりかねない存在であると、そこでようやく少女は悟ることが出来た。
 問答は、もはや無用。
 要らぬ悲しみを与えることは少女の目的ではない。
 だから、彼女はすぐさまその場から消えることにした。
 ただの端末である少女は、思考するだけでその場から消えることができる。
 だが、今回だけはそうせず、その場から歩み去ろうとしたのは、決別を表すためのものだったのだろうか。
 少女はゆっくりと、だが確実にその場から離れようとスバルに背を向ける。
 そんな少女の背中にスバルの声が届く。
「ねぇ、名前を教えてよ……」
 その質問を、少女に投げかけたのはスバルで二人目だった。
「星を砕く者、なんかじゃない。あなたの名前……」
 その問い掛けに少女が答える義務も理由も存在しない。
 けれど、その問い掛けに気づけば答えていたのは何故なのだろう――少女に、その明確な答えを出すことは不可能だった。


「ソラ……そう呼んでくれた人が、いた」


 それだけを告げて、星を砕く者――ソラは今度こそスバルの前からその姿を消した。




>TO BE CONTINUED


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