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お題SS第7回

ライトニングヒーローとリリカルティアナ

事件ですよライトニングヒーロー





「いや、無理だって」      執筆:コン



「事件ですよ、ライトニングヒーロー!」
「いいかげんにしてくださいっ!」

 そこは聖王教会の一室に設えられた、騎士にして聖女というむやみやたらに権力を得てしまった女性の執政室。
 止められる者の居ない彼女の暴走は日を追うごとに加速しており、餌食となる少年はそろそろストレスと過労で倒れそうだった。

「……あれ?」

 さて。決まり文句に返って来たセリフはいつも通りだったが、声の主が違った。
 カリムの部屋に見慣れないツインテールがいる。色はオレンジだ。

「おはようございました?」
「もう古いですよそれ!」
「が、がーん。年増って言われました……」
「そんなことは一言も口にしてないじゃないですかっ!?」

 一瞬にして聖女カリムのペースに巻き込まれるツインテールことティアナ・ランスター。
 本人としては過労に耐えかねてとうとう倒れてうなされているエリオの姿を見て、文句の一つでも言ってやろうとやってきたのだが。カリムとティアナでは役者が違った。
 むしろ、弄り役と弄られ役でぴったりハマりすぎてダメだった。

「……よし、そういうことなら」
「何が『そういうことなら』なんですか……?」
「ライトニング――じゃなかった、エリオ・モンディアルが幼い身体を病魔に蝕まれていて出動できないから代わりに貴女が来たんですよね?」
「前半は合っているけど後半は違いますから!? っというか、まだ何も説明してませんよね私!?」
「地の文を読んだんですよ、半分くらい」
「地の文って何ですか!?」
「力こそパワー!」
「わけわかんないですからっ!?」

 付き合いのいい突っ込みの合間に一呼吸を置くと、騎士にして聖女にして時空管理局まで影響を及ぼす権力者カリム・グラシアさんは高々と宣言する。
 瞬間、ティアナの背筋に猛烈に嫌な予感が走る――が、遅かった。

「さあ、ライトニングヒーローの代わりのおもちゃ――いえ、新たなヒロインの誕生です! 事件ですよ――」
「――え、ちょ、ちょっと待ってくださ――」
「――ダブルガンヒロイン!」

 なんか大変なことになりました。

「っと、いうわけで。ダブルガンヒロインには教会内部で迷子になった子供たちの相手をしてもらうという重要任務を与えたいのですが」
「いや、あの、私の話を聞いてくださいよ!」
「嫌ですよ」

 人々に救いをもたらす、慈悲に満ちた聖女スマイスで拒否するカリム。その不条理と不合理に、流石のツッコミマスターティアナさんも呆然としてしまう。
 あわや、このままティアナも流されておもちゃにされてしまうのか。

《異議がある》

 なにやら、やたらと渋い声が場を打った。
 断っておくがカリムとティアナ以外の人間はこの執務室に存在していない。
 かと言って、その声の主は幽霊ではない。

「ク……クロスミラージュ……?」

 ティアナが、おそるおそる自分の―――でかでかとハートマークが描かれた―――デバイスを手に取る。
 彼―――そう、彼だ―――は言った。

《違う、私はスーパークロスミーラジュだ》

 CV.ジョージの渋声デバイス、スーパークロスミラージュは真っ向からカリムと対峙する。
 睨み合う両者の間に火花が散った。

「…………」

 帰りたい思いで胸がいっぱいになるティアナ。
 そんな彼女を無視して物語は進む。

《我が主を迷子センターで働かせることについては特に言うことは無いが―――》
「どうせならそこに突っ込んでよ!?」
《―――ダブルガンヒロインなどというネーミングセンスの欠片も無い名を許すわけにはいかん!》
「そ、そこも突っ込み所だけどそこまで強調するものでもないでしょ!?」

 スパクロことスーパークロスミラージュの意見に、頬をむっと膨らませるカリム。

「いいじゃないですか、ダブルガンヒロイン。他にどんな呼び方があるって言うんですか」
《魔法少女リリカルティアナだ!》

 間髪入れずに答えるスパクロ。刹那、スパクロから光が漏れティアナを包む。眩い光が解けると、そこにはバリアジャケットを着込んだティアナがいた。
 機動六課で使っていたものとは違うバリアジャケットだ。ゴスロリ風と言えば一部の人にはよくわかり、そうじゃない人にはリボンとフリルが取り付けられた少女趣味のドレスと言えばわかるだろう。たぶん。

《そして、これが魔法少女リリカルティアナが魔法少女リリカルティアナである証、魔法少女リリカルティアナのバトルコスチュームだ》
「ま、魔法少女リリカルティアナって連呼するなぁ……っ!?」

 突然の変身と羞恥プレイに涙目になるティアナ。真っ赤になって意見するものの、誰にも聞き入れてもらえない。

「むむむ。魔法少女リリカルティアナが魔法少女リリカルティアナである証、魔法少女リリカルティアナのバトルコスチュームですか」
「だから連呼しないでくださいっ!?」
「魔法少女リリカルティアナ!」
「だから、もうっ!?」
《魔法少女リリカルティアナ!》
「あんたも黙りなさいよ!?」

 ティアナさん、半泣き。

「……なんてゆーか、無理して着てるって感じがすごくしますよね。歳不相応っていうか」
《そこがいいんだろうが未熟者め!》

 ティアナさん、全泣き。

「何はともあれ。ダブルガンヒロインと言ったら、ダブルガンヒロインなんです!」
《魔法少女リリカルティアナだと言ったら、魔法少女リリカルティアナだ!》

 べこべこに凹んで立ち直れないティアナを放置して激論を開始する両者。どちらも譲る気は無く、室内は焼けるような緊張感で満たされる。

「そもそも名称とは分かりやすさを優先すべきであり、見たまんまを言い表した『ダブルガンヒロイン』こそが最適なんです! あと、カッコイイじゃないですかこの呼び名!」
《笑止! 名称とはその個を的確に言い表すべきものであり『魔法少女リリカルティアナ』こそ本質なのだ! あと、可愛いじゃないかこの呼び名!》

 センスだけがずれた似た物同士の論争ほど不毛なものはない。

《だいたい、なんなんだ『ダブルガンヒロイン』とは。二丁拳銃キャラなんてものは吐いて捨てるほどいる上に、銃使いはヘタレと相場が決まっているではないか。我が主はあまねく宝石に頭を垂れられるべき形容する言葉を発明されていない美の体現者であり、神聖すら感じさせる美貌は『ダブルガンヒロイン』などという臭みすらする卑称に相応しくないだろう。このエセ聖女。作り笑顔から隠し切れない汚臭が漏れているぞ?》
「ふ、ふふふ……ふふふふふ……。その理論でいけば『魔法少女リリカルティアナ』こそおかしいでしょう? まあ、まだ控えめな胸だけは『少女』に相応しいかもしれませんが、全体として歳が行き過ぎています。無理です、少女から見ればババアです。ババア。美しさ? ハンッ、今すぐそこにある姿身の前に立って懺悔してきなさい。そもそも、アナタみたいな感覚が狂ったデバイスはスクラップになるべきですしね!」

 罵りあう二人。ティアナさんに大ダメージ。「そりゃあ、スバルには負けてるけど……私だってけっこうあるのに……」とか、「自分がそんなに綺麗じゃないなんて分かってるけど、こんな風に言われると……」とか、「ヘタレじゃないもん。凡人だけど、がんばってるもん」とか。
 だんだんと幼児退行しつつ、ティアナさんは限界だった。

「ムキー!」
《クキー!》

 混沌とした執務室。あわや大威力魔法の打ち合いにもなるかという一触即発の雰囲気の中―――

「ちょっと待ってください!」

 ―――救世主は現れる!

「あ、眩暈が」

 救世主は登場して三秒で昏倒した。
 柔らかなカーペットにやや重い音を立てて落下する救世主。その名はエリオ・モンディアル。

「え、エリオー!? あんた寝てなさいって言ったのに、なんでこんなとこに来てんのよ……!」

 真っ先に反応したのはティアナだった。スパクロを放り出して、思いっきり頭を打ったエリオを抱き抱える。体調不良から青ざめた顔色をしているエリオに心配の表情を向けた。
 そんな彼女に、エリオは弱々しく告げる。

「カリムさんにティアナさんが弄られてるんじゃないかって思ったら、いてもたってもいられなくなりまして……」

 健気。健気である。

「これは写真に撮らなきゃなぁ、って」

 オチさえなければ健気だった。

「エリオ、あんた、頭を打ったショックで……?」
「いや、あの、じょ、冗談なんですけど……」

 ぐいっ、とエリオの耳たぶが抓られる。

「もう。具合悪いんだから無理して冗談なんて言わないの」
「はい。心配掛けさせちゃってごめんなさい」
「……べ、別に心配はしてないわよ?」

 あはは、と力なく笑うエリオ。頬を朱に染めるティアナ。
 二人のなんだかラブい雰囲気に、カリムは開いた口が塞がらなかった。あと、スパクロは落下した先の執務机上で心なしか寂しそうにしていた。
 いつのまにか置いてけぼりである。

「と、とにかく、帰りませんか? 僕のことは僕が後日全快してから決着をつけますから、ティアナさんが無理して身体を張ることはありませんよ」
「う、うー……ん」
「お願いします」

 譲らぬ光を瞳に宿したエリオを前に、ティアナは溜め息を一つ吐いた。

「そうね。じゃあ、帰りましょうか」
「はい。帰りましょう」

 ふらふらのエリオに肩を貸しカリムの執務室を辞するティアナ。後にはカリムと持ち主に忘れられたスーパークロスミラージュが残る。
 取り残された両者は、ほんと完全に置いてけぼりだった。

「えー…………」
《あー…………》

 状況についていけず取り残されたいじられ役、二人。
 まあ、うん。

「ティアナさん、アナタを取りに戻ってくる気配ありませんね……」
《完全に忘れられたなあ……》

 そんなことも、あるよね?


 ●



 感想などは 『魂の奥底から叫んでみよう!』 へどうぞー







「予告編」     執筆:緑平和




「事件ですよライトニングヒーロー!」

 その言葉が始まりの合図――の筈だった。
 慌しくも退屈することのない、そんな日常の始まり。

 けれど、求めててやまない彼からの返事は返ってこなかった。

「ライトニングヒーロー? 事件ですよー、隠れていても無駄ですよー?」

 がらんとしたカリムの執務室。
 呼べば応えてくれる筈のエリオの姿はそこには存在していなかった。

「ほら、いつもみたいに『またそれですか!?』とか『もう、いい加減にしてください』とかツッコミを入れるとこですよ?」

 テーブルの下、暖炉の中、ついでに自分のスカートをちょっとだけ捲ってみたりもしたが、やはりエリオの姿は何処にもない。
 やがて、部屋の何処にも彼がいないという事実を確認した。

「ライトニングヒーロー?」

 ぽつねんとカリムだけがそう呼ぶ彼の為の名を呟く。
 けれど、やはり彼はそこにはいない。

 それが三度目だった。
 カリムは先程からずっと、その誰もいない部屋で繰り返しエリオを呼んでいた。

 彼が来たら、こうしてからかってあげよう。
 彼と一緒に、いっぱいいっぱい遊ぼう。

 まっすぐ、正直に接するにはあまりにも恥ずかしくて、だから照れ隠ししながらも一緒にいられるように。
 嫌われたくない、離れたくない、ずっと一緒にいたい。

 けれど、そこに彼女の求めるヒーローの姿は無かった。

「…………えいっ」

 そう言ってカリムは執務机に設えられた大きなボタンを押す。
 それは、何時でもどんな時でもライトニングヒーローを呼び出せるようにと、カリムが丹精込めて作った転移装置のボタンだった。

 けれど、何度押したところでボタンに反応はない。
 壊れてしまったのか、それとも何か別の要因か。
 どちらにしろ、それがいまは何の役にも立たない代物であることだけは確かだ。

 けれど、カリムはボタンを押し続ける。
 二度、三度となんども、なんども。

 ライトニングヒーローが来てくれます様に、と願って。

 だが、ヒーローは現れない。
 呼べば応えてくれる筈の、彼はどこにもいない。

「なんで……なんで来てくれないんですか? ライトニングヒーローぉ?」

 聖女の涙交じりの声がからっぽの執務室に響く。
 しかし、ヒーローは現れない――


 ●


 ミッドチルダ上空。高度二千メートル。
 人類に許された生活空間より遥か頭上、そこは一部の人間以外には踏み込むことの許されざる聖域である。

 そう、魔導師と呼ばれる者達を除いて。

 夜の帳が落ちた世界に生まれる光は三つ。
 一つは地上に広がる大都市が生み出す人工の光。まるで宝石箱の中身を散りばめたかのような眩い光が地上には満ちている。
 そして二つ目は天上で瞬く星の光。地上に灯る光の群れよりその輝きは儚いが、それでも確かに輝く星光が瞬いている。

 そして、最後の三つ目。
 それは天上と大地の間、何処までも続く果てしない大空を照らす鮮烈な光の輝きだった。
 瞬いては消え、それを繰り返し火花のように散る光の乱舞。

 魔導に触れた者が見れば、それがいったいなんなのかすぐに解っただろう。
 それは魔力光だ。それも並大抵のものではない、とてつもない魔力量を伴った魔法の光。

 それらが今、夜空に光り輝いていた。

「――だっらぁっ!! なんなのよさっきからぁ!!」

 再び煌く橙色の砲撃が夜空を貫き、それに合わせるように少女の声が轟いた。
 手に持ったステッキ状の物体を野球のバットのようにスイングすると同時に、光の束が生まれ少女の視界を橙色の光で埋め尽くす。
 あまりにも力任せの魔法行使ではあるが、その威力は凄まじい。呪文詠唱もなしにこれほどの大威力砲撃を行うなど、まるで冗談のような光景だ。

 しかし、少女はそれを成し遂げる。
 怒りに身を任せるように、ステッキを振り回して。

《今更だが、魔法少女が「だっらぁ」などと雄叫びを上げるのはどうかと思うのだが?》

 そんな彼女を諌める声が何処からとも無く響いた。
 機械音声のようなどこか作り物めいた声。だが、その口調はどこか人間らしさを感じさせる奇妙な代物だった。

「うっさい! こっちはいきなり襲われて気が立ってんのよ! つーか、魔法少女呼ぶな!」

 そんな声に応えるように、少女は再びステッキを振り回す。よくよく見れば、そのたびに何やら星やハートマークをした謎のエフェクトがステッキから発生しているようだが、やはり同時に放たれる砲撃は申し分ない威力を有している。
 ある意味、それもまた冗談のような光景だ。

「つーか、なんなのよこのエフェクトは!? なんか無性に腹立つんだけど!!」
《ははははは、可愛かろう?》
「腹が立つって言ってんのよ!!」

 戦闘中だと言うのに、漫才のような言葉を交し合う少女と謎の声。
 だが、少女以外にそれらしき者の姿は何処にもない。
 それもその筈、今少女が言葉を交わしているのは彼女が先程から振り回しているステッキそのものなのだから。

 それこそが未だ発表すらなされていない幻の第七世代型デバイス。
 カートリッジシステムに変わり、デバイサーとデバイス自身の共鳴現象を利用した無限魔力供給装置――通称リリカルサーキットを内蔵した正に夢のデバイス。

 だが、唯一難点を挙げるならば、自らの意思を持つ彼等は少々――いや、かなり個性的な性格をしていると言うことだろうか。

《いかんなぁ、魔法少女たるもの自らの力でラブリーなエフェクトを発生させなければならんところを、私が協力してやってると言うのに》
「何処の常識よそれは!! つーか、誰が魔法少女かぁ!!」
《ふむ……そうは言っても誰がどう見ても今のマスターは魔法少女だが》

 くい、とステッキが柔軟にしなり、少女の姿をまるで見定めるように動く。
 そんな彼の視線――とは言っても何処に視覚器官があるのかは不明だが――に映る少女の姿は、確かに魔法少女としか呼べない類のものだった。

 まるでドレスのような衣装に、リボンやフリルをこれでもかと設えた姿かたち。
 その上、まるで玩具にしか見えないステッキを振るいながら空を飛ぶ姿は、確かに魔法少女という言葉以外形容しづらいものであることは確かだ。

「誰の趣味よ! 誰の!!」

 しかし、これはどうやら少女本人の意思によるものではないようだ。
 確かに、小学生くらいの少女ならばこういう格好に憧れるのも解らないではないが、十代後半らしき少女が、それも憧れるだけではなく、自分で着ているとなると羞恥に頬を染めたくなる姿であるのは確実だ。
 では、誰が少女にこんな恥ずかしい格好をさせたかと言うと――

《私の趣味だ!!》

 えへん、と胸を張るようにステッキがしなる。
 そんなしなりを利用して、少女はステッキの端と端を握り締めると、そのままへし折るかのように力を籠めていく。

《いだっ! いだだだだっ!? お、折れる、折れる!?》
「うっさい! このまま廃品回収にだしてやろうかしら? ねぇ、アンタ燃えないゴミで出しても平気よね?」
《バ、バカもの、私の構成部品は全てリサイクル可能だ! せめて資源ごみに!!》

 夜の大空において、くだらないケンカを始める少女とステッキ。
 なかなかシュールな絵である。

 そこへ、巨大な光が襲い掛かってきた。

 少女の放つ橙色の光ではない。
 それは赤光。少女の放つものと同等かそれ以上の威力を秘めた、やはり規格外の砲撃が少女とステッキ目掛けて駆け抜ける。

 そう今現在、少女は何者かに襲われているのだ。

 少女がそれに気付いたときには襲い。
 流星のように夜空を駆ける光は、正確に少女へと直撃した。

 同時に、着弾点を中心として巨大な光球が生まれる。
 飲み込むもの全てを消滅させる範囲型攻撃魔法だ。それをまともに喰らえば塵も残らないだろう。
 地上での攻防でなかったのが唯一の幸いだ。
 だが、直撃を受けた少女の安否は――

 ――橙色の流星が、光球を裂くように迸った。

 その光景は、巨大な殻に包まれた卵の中から新たな生命が誕生する瞬間に似ていた。
 そうして、生まれた光によって光球が霧散する。
 その中心に――魔法少女は存在していた。

「……とりあえず、色々と言いたい事はあるけどこの面倒事を片付けてからにしてあげるわ」
《そうだとも、何者かは解らんが彼奴に真の魔法少女がどういった存在か教えてやれ!》
「だから、魔法少女って……くっ、しょうがないわね、今だけよ」
《くくく、イヤよイヤよも好きのうちと言う奴か?》
「うっさい!」

 そう言って、少女は手に持ったステッキを一度だけ振りかぶった。
 そして、叫ぶ。
 その名に相応しい――魔法の言葉を。

「スーパークロスミラージュ――リリカルサーキットフルドライブ! シンクロニシティスタートッ!」
《了解した我が主ティアナ・ランスター。いや、魔法少女リリカルティアナ!》

 そして、巨大な魔方陣がティアナを中心として展開した。
 その直径およそ二十メートル強。それがティアナの背後に巨大な光輪となって顕現する。
 迸る魔力が溢れ出し、光の渦が巻き起こるその姿は神々しいと呼ぶほか無い。

 そして――

「リリカルマジカル・ラブリーシャイニーングッ♪」

 なにやら可愛らしいポーズを決めるティアナ。
 その頬が僅かに羞恥に染まっているが、それは見事な魔法少女の決めポーズだった。
 そんな彼女の恥も外聞も捨てた必死の頑張りが実ったのか、背後の魔方陣から光が生まれる。
 
 そして夜が――明けた。

 いや、そう錯覚させる程の光が生まれたのだ。
 夜はその瞬間だけ、真昼の輝きを取り戻し全てを飲み込んでいく。

 いままで放っていた砲撃が豆鉄砲か何かと思われてしまうような、それは非常識極まりない一撃だった。
 ティアナの視線の先、ほんのつい先程唐突に彼女へと襲い掛かってきた敵――その姿は黒衣に全身を包まれており、正体はようとして知れない――にとっても、その砲撃は予想外の代物だったのか、それともティアナの可愛らしいポーズに気を取られでもしていたのかは解らないが、驚きにその動きを止めてしまっていた。

 それが不味かった。生まれた巨大な光に飲み込まれていく黒衣の人物は、まるで濁流に飲み込まれたかのように、光の渦に翻弄され弾き飛ばされていく。

「ぐぅっ……なんだあのバカみたいな威力は!?」

 それでも接触の瞬間に防御が成功したのか、理不尽の塊のような魔法について愚痴を呟きつつ姿勢を整える黒衣。
 だが、ティアナの姿を確認しようと視線を上げた瞬間――

「はい、そこまで……チェックメイトよ」

 そんな声が、背後から響いていた。
 気付けば、ティアナは黒衣の後ろに回り、スーパークロスミラージュの先端をその後頭部に突きつけていた。
 ティアナの意思一つで新たな砲撃を打ち込まれるその体制から、目の前の人物が逃げる隙はない。

 どうみても、ティアナの勝利だった。

「さて、誰の差し金かは知らないけど。その危険極まりないのを手放してもらおうかしら……それもこのバカデバイスの親戚なんでしょう?」
《バカデバイスとは何か!? まぁ、確かに私以外の同位機種はどいつもこいつも下賎な輩ではあるがな》
「アンタは黙ってなさい」

 やはり、軽口を叩き合う二人だが、それも勝者の余裕と言ったところだろうか。
 そんな言葉に、黒衣の人物が悔しげに呻くのが解った。

 その反応に、ティアナが目を細める。改めてこの襲撃者が何者なのか観察しているのだ。
 とはいえ、前述のとおりその身体は全身が黒衣で覆われている。頭も頭巾で覆われている徹底っぷりだ。
 なんだか、一昔前のアニメで出てくるザコ敵が被ってそうな三角頭巾なのは気になるがそこはスルー。
 後、特徴らしい特徴を述べるのであるならば全体的に小さめなのと、頭巾の襟から赤いお下げが出ていることくらいだろうか。

「…………あれ?」

 ある意味、解りやすすぎるそんな特徴にティアナの表情に驚きよりもまず疑問が生まれる。
 なんでこの人がここにいるのだろうか――といった当たり前の疑問が、だ。

「あの……ヴィ――」

 その名を告げようと声を上げるティアナ。
 だが、その瞬間衝撃が彼女を襲った。

 右手首を襲う痛み。明後日の方向から飛来したその衝撃に握り締めていた手の力が緩んでしまう。

 その結果、右手で握っていたスーパークロスミラージュはあっさりと虚空へと投げ出されてしまった。

「……え?」

 まずい、と思った時にはもう遅い。
 スーパークロスミラージュは重力に引かれ、あっさりとティアナの元から離れて行き――真下で待機していた新たな登場人物の手に収まった。
 目の前の小柄な人物と同じく黒衣に身を包んだ謎の人物。
 とはいえ、ティアナにはもうだいたいその正体は掴めている。

「もう、だからあれほど油断しちゃダメって言われてたのに……」
「お前の悪い癖だぞ」

 更に直上からもあらたな声、そちらもなんとも聞き覚えのある声である。
 おそらく、先のティアナを襲った一撃は彼女の仕業だろう。

 だが、そんなことよりもなによりも。

「な、なんで皆さんが、って、わっ、ちょっと、まっ――――きゃあああああああああああああ!!」

 ティアナとスーパークロスミラージュのシンクロが強制的に解除される。
 そうなれば、もちろん莫大な魔力を使用することもできず、空を飛ぶことさえ彼女にはできない。

 ふりふりのバリアジャケットが私服に戻った事が唯一の幸いなのかもしれないが、もはやそのような事はまるで関係なく、
 ティアナは尾を引く悲鳴を残しながら、地上へと向かって落下していった。

 そんなティアナの描く軌跡を残された三人の人物は見えないまでもどこか不安そうな面持ちで眺めている。

「だ、大丈夫なのか……アレ?」
「まぁ、シナリオどおりならば安心だろう、それよりデバイスのほうは?」
「ええ、今封印処理をするわ、ちょっと待っていて――」

 そんな彼女達の会話を聞いているモノがひとつ。
 当然、それは――

《なるほど、ここまでは計画通りと言うわけか》

 突如、言葉を発したステッキに、彼女達の間に緊張が走る。
 ティアナ自身はもとより、このデバイスそのものも充分に注意すべき対象なのだ。

「……できるならば、これ以上手荒な真似はしたくない。我々に大人しく従っていただければありがたいが?」
《おやおや、私がみっともなく暴れるとでも思っているのかね? 君達が何を企んでいるかは知らないが、それは大歓迎だ》

 押し殺した声で呟かれる言葉に、スーパークロスミラージュは笑いを含んだ口調で答える。
 とても機械知性体とは思えない感情表現である。

「それはご協力いただけるという答えでよろしいか?」
《勿論だ、勿論だとも。退屈な日常などクソ喰らえ、だ。例えどのような事態であれ、物語が面白おかしくなるというのならばそれに越した事は無い》

 以外にも協力的なスーパークロスミラージュの言葉に、緊張が走っていた空間に安堵の溜息が誰かから漏れるのが解った。
 だからだろうか、次に発せられた言葉を正確に理解できた者は誰もいなかった。

《だから、私がもっと面白おかしくしてあげよう》

 瞬間、光が迸った。

 ステッキから放たれる音と光の洪水は、殺傷能力は無くとも周囲にいる者たちの視覚と聴覚を一瞬とはいえ、完全に奪いさる。
 それは嵐が過ぎ去るような一瞬の出来事ではあったが、感覚が戻ったとき、彼女達の手の中からスーパークロスミラージュは完全に消え去ってしまっていた。


 ●


「…………ふぅ」

 カリムの執務室に重たい溜息の声が流れた。
 もう、求めるものの名を呼ぶことは無い。

 それが無駄なことでしか無いともう知ってしまったから。

 だから、カリムは諦めたように呟くことしかできない。

「飽きられちゃったんでしょうか……」

 悲しげに独り呟きながらカリムは窓辺に寄る。
 そこから見る景色は何時の間にか夜の帳が落ちており、彼女はただ暗い夜空を見渡す。
 
 そんな時だった。
 彼女の耳にか細い声が届いたのは。

 あ、から続くその音は、なんらかの幻聴か何かだとカリムは思った。
 だが、違う。
 その声は時を経るにつれ、だんだんと確かな音に変わっていく。

 そう、絹を裂くような悲鳴に。

「――――ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!?」
「ふ、ふえっ!?」

 音のする方向を探して視線を彷徨わせるカリム。
 その結果、悲鳴は天井、いやそれをさらに抜けた空から響いていた。

 そして、衝撃音。バキバキと木材の折れる音が響き、続いて天井が崩落する。
 幸いだったのは、何らかの物体が落ちてきたのは部屋の中心、カリムとは僅かに距離が離れていた場所で起きたことだろう。
 おかげで、彼女はその崩落に巻き込まれずに済んだ。

 その変わり、と言ってはなんだが部屋の惨状は凄まじい。
 高価な調度品で設えられた内装は見るも無残な姿に成り果ててしまっている。

 だが、当の被害者であるカリムはあまりにも突然の事態にただ呆然とそれらを見守るしかない。

「っいっつぅ……死ぬかと思った、今度こそマジで死ぬかと思った!?」

 と、唐突にそんな叫び声と共に瓦礫が崩れ、そこから一人の少女が姿を現す。
 驚くのも束の間、そんな二人の目が会う。

「貴方は確か……ティアナ?」
「えっと……騎士カリム?」


 そうして、聖女と少女はどうしようもないほど掛け離れた溝を超越し邂逅を果たした。


 ●


 エリオ・モンディアルは独り大きく溜息をついた。

 彼が今いるのは一流ホテルのスイートもかくやという絢爛豪華な一室。
 唯一不満をあげるとするならば、部屋の扉は完全に施錠され、窓にも頑丈な鉄格子が嵌め込まれている点だろうか。

「ここに連れてこられて、丸一日かぁ……」

 所在なげに部屋の中をうろうろと歩き回りながら、エリオはそんな呟きを漏らす。

 そう、彼は今、この部屋に軟禁されているのだ。
 理由はわからない。昨日、突如として何者かに襲撃されたエリオは気を失い――そして気付いたらこの部屋へと閉じ込められていたのだ。

 始めはまたカリムの気まぐれか何かだとエリオは思った。
 しかし、一向に代わり映えしない現状に、その際を感じ取ったエリオは、さてどうしたものかと頭を悩ませる。

 脱出しようにも、ストラーダを奪われ満足な魔法行使も行えない今のエリオでは不可能でしかない。
 どれだけ経験を積もうとも、今の彼はあくまで十代の少年でしかないのだ。頑丈な扉を破壊することも、鉄格子を切り落とすこともできはしない。

 故に、エリオは意味無く部屋の中をうろつきまわる事しかできなかった。
 犯人――と呼んでいいのかは解らないが、エリオを浚った者からのアプローチもまるで無い。

 一向に姿も目的も晒さない相手に、エリオはただ何もできずにいた。

「無断外泊になっちゃったし、フェイトさんやキャロも心配してるだろうしなぁ……」

 どうにも危機感の薄いことを呟くエリオ。
 とはいえ、彼にとって大事な者は先述の二人に心配を掛けているのではなかろうか、と不安に思う事なのだから仕方が無い。

 いや、心配するべきはもう一人。

「あとは、カリムさんか……」

 このような事態に真っ先に思い浮かべた者の名をエリオは呟く。
 いつもの所業が所業とは言え、疑いを持ってしまった事は素直に悪く思っているエリオであった。

 それと、もう一つ、

「あの人、意外と寂しがりやだからなぁ、相手してあげないとすぐ拗ねるし」

 苦笑を浮かべながら呟くエリオ。
 どこか放っておけない彼女の事を思うと、どこか心躍るような、こんな逆境などなんでもないと思えるような、そんな感情が芽生えてくる。

 随分と、自分も鍛えられたものだと改めてそう思うと、自然と笑みが溢れてきた。

「そうなると……拗ねちゃう前に、帰らなきゃあな」

 ここから脱出しなければならない新たな理由を発見し、俄然やる気が湧いてくるエリオ。
 けれど、実際問題今のエリオにこの部屋から脱出する術が無いのは変えようのない事実だ。

「こう、都合よく鉄格子が外れたりしてくれたりしたら嬉しいんだけどなぁ……」

 希望にも似た言葉を呟きつつ、エリオは窓枠の方へと近づいていく。
 とは言え、既に鉄格子を含め、この部屋からどうにかして脱出できないかと彼は隅々まで調べつくしている。
 今更、鉄格子がどうこうなるとはエリオも思っていないが、それでもじっとしていることに飽きた彼は窓へと近づく。

「…………あれ?」

 そこで、エリオの視界に何かが映った。
 それは、強く輝く光。

 窓の外に映る景色は夜空。それ以外は無く、ただ漆黒のキャンバスに星の光が瞬いているのが解る。
 だが、先程の光はそれよりも一際強い輝きだった。

 航空機や、ヘリコプターの類かとエリオは目を凝らして窓に顔を寄せる。
 だが違う、その輝きは時を追うごとに強くハッキリとした輝きを放ち、そして、だんだんと――

「ち、近づいてくる!?」

 そして次の瞬間、光の塊はエリオが居る窓枠へと直撃した。
 慌てて逃げ出そうとするが、その凄まじい衝撃に吹き飛ばされるエリオ。
 高級スイートルームもかくやといった室内に粉塵が舞う。

「ゲホッゲホッ……い、いったい何が……」

 すぐさま身体を起こすエリオ。かなり派手に飛ばされていたようだが、随分と頑丈な作りをしているようである。
 それでも流石に詰まった咳を繰り返しながら、エリオが視線を上げると、

 一本のステッキが床に突き刺さっていた。

「な、なにコレ?」

 頭の上に疑問符を浮かべるエリオ。
 状況から察するに、たった今窓を突き破り突入してきたのはこのステッキなのだが、この玩具じみた代物が空を飛び、鉄格子で補強された窓を突き破って飛来したとは流石に思えなかった。

 だが、そのステッキを見た瞬間、エリオの根源的な部分――機器察知能力とでも言うべき本能が警告を発する。

 曰く、これは関わってはいけないものだ、と。

 ただの感と侮ってはいけない。なぜならエリオは同じような感覚を味わったとき、総じてヒドい目に会うのだ。
 残念ながら、それをうまいこと回避できてないのは悲しい事実だが、進んで関わるべきものでないことだけはエリオにも解る。

「と、とりあえず脱出口もできたみたいだし、ここから……」

 何も見なかったことにして、視線を完膚なきまでに破壊された窓へと向けるエリオ。
 だが、

《待て、小僧》

 そんな声が、エリオの動きを制止させた。
 エリオの中で警告が更に強まる。そのトラブルからは逃げられないという嫌な予感と共に。

 恐る恐ると言った様子で声のした方向へ振り返るエリオ。
 そこに人影はなく、あるのは一本のステッキだけだった。

《逃げるのだろう? 私が協力してやろう、ありがたく思うがいい》


 そうして、小さなヒーローと不思議なステッキは、ありえないはずの可能性を超え、邂逅してしまった。


 ●



 さぁさぁ、皆様ご清聴。

 今宵始まるはどうしようも無いほどに荒唐無稽な物語。

 常識など無く、理不尽しか存在しない。

 どんなものでも受け入れて、どんなものでも巻き込んでしまう。

 そんな可笑しな不思議な物語。

 ドタバタハチャメチャスラップスティック。

 珍妙奇天烈摩訶不思議。

 今宵お集まりの皆様には一夜の夢をお見せしましょう。

 ただし、閲覧の際にはご注意を。

 この舞台にはステージと客席の境界線などございません。

 そこにいらっしゃるあなたも役者の一人である事をお忘れなく。

 おや? おやおやおや? お帰りなされる?

 それは残念至極でございます。

 けれどお客様、この舞台に境界線などございません。

 どこにお帰りあそばされるおつもりで?

 さてさて、ではでは始めましょう、楽しみましょう。

 どうしようもないお祭り騒ぎを。

 それでは、開演でございます――


 ●


『時間が無いから手短に説明するね、そこはある古代遺物ロストロギアの暴走でできた仮想空間みたいなものなの』
「えーと、それはつまり……」
『簡単に言えば何でもアリの夢の世界ってことだね。だから本来ありえない現象が起こるし、出逢わない人達が一堂に会している』
「それは……夢オチってことですか?」
『そうだね……でも、そこで起きたことは現実だよ。貴方達はそこに居るし、生きている、それを忘れちゃダメだよ』


 ●



ライトニングヒーロー
VS
魔法少女リリカルティアナ

〜祝福の風団、史上最大の侵略〜





 ●



「我々は悪の秘密結社、祝福の風団! 世界を征服し、この世界に真の平和をもたらす悪の組織である!
 あ、あとついでに世界中の女の子のおっぱい揉みまくる」
「え? あ、主? なんですかそれ!? 聞いてませんよ!?」
「ええやんかー、ちょっとぐらい自分にもご褒美上げへんとやってられへんねん」
「で、ですが、そのような破廉恥な……」
「そんなわけでみんなヨロシクゥー、合言葉はリインフォーッス!!」
「リ、リインフォーッス!!」
「呼びましたですか〜」


 ●


「行きましょう、ティアナ。私は大切な人のところに行きたい、貴方もそうなんでしょう?」
「あ、いえ……私の場合は、別に大切ってわけじゃないと言うか、なんというか……」
「でも、もう一度、会わなくちゃいけないんでしょう?」
「まぁ、そうですね……解りました、一緒に行きましょう騎士カリム」
「ふふっ、騎士、はつけなくても結構ですよ。せっかくですからもっと仲良くいきましょう」
「了解です、カリムさん」


 ●


「え、えーっと、それでこの後はどうするんですか……えーっと、ステッキさん?」
《ふむ、呼びにくければスパクロと呼んでもらって構わないぞ?》
「スパクロ……ですか?」
《ふむ、何か不満かね?》
「いえ、別に不満とかそんなんじゃなくて……どっかで聞いた様な……」


 ●


「私はなーみーだをながさないー♪ ロボットだからー戦闘機人だーからー♪」
「こ、このバカ丸出しの歌は……」
「親友の危機にただいま登場! 私が噂の鉄腕魔法少女マジカルすばるん!」
「いや、呼んでないから。誰も呼んでないから」
「仲間じゃない! 友達だ!」
「やかましいっ!」


 ●


「うふふふふー、エーリオくーん、どこかな? どこに隠れてるのかなー?」
《なにやら小僧の事を探しているようだが、会いに行かなくてよいのか?》
「だ、だだだだだめっ! 絶対にダメ! あれはなんていうかキャロであってキャロでないもう一人のなにかなんだよ!」
《ふーむ……なにやら貴様も随分と苦労しているようだな》
「わ、解ってくれますか?」
《ああ、勿論だとも――おーい、ここにエリオ某とか言う小僧が居るぞー!》
「なに叫んでんですかアンター!?」


 ●


「ふふ、お困りのようだね」
「だ、だれ?」
「誰かだって? 教えてやろう! 頼れるみんなのマスコットキャラ。謎のフェレットただいま参じょ――ぶべらぁっ!?」
「……消えなさい。とりあえずアンタは消えなさい」
「い、いきなりなに!? 僕まだなにも悪いことしてないよ!? つーか参上シーンが惨状シーンになってるんですけど!?」
「これ以上話をややこしくするなっつってんのよ」


 ●


「くくくくっ、そうここに揃ったのは我が忠実なる部下、その名もヴォルケンリッター四天王」
「れ、烈火のシグナム!」
「紅のヴィータ!」
「風のシャマル!」
「盾のザフィーラ……」
「祝福のリインですー!」
《五人居るな》
「五人いますね」


 ●


「いくで、必殺! 八神スクラム!
説明しよう、八神スクラムとは祝福の風団メンバーが円陣を組むように合体変形する秘儀である!
こうすることによって一点に密集し、誰をも寄せ付けぬ鉄壁の布陣となるのだ!
 あと内緒話とかするのにも大変便利やで!」
「はぁ……」
「ふははははは! 怖かろう、恐ろしかろう! 何人たりともこの円陣の中に踏み込む事は不可能なんやー!!」
「えーっと……スバル?」
「すばるんだって! でもとりあえず、ネーブルレェェェェェザァァァァァァァァァァ!!」
「ぎゃ、ぎゃー! まさか遠距離からの攻撃に弱いと言う八神スクラムの弱点が見破られるとは!? 解除! 八神スクラム解散!」


 ●


《ふむ、騎士になりたい……か》
「はい、こんなざまじゃああんまり説得力ないかもしれませんけど」
《小僧、知っているか。騎士になる為の絶対条件を?》
「絶対条件?」
《ああ、なに簡単だ。泣いている少女を助けてみせる、だ》


 ●


「確かに、アイツはバカで阿呆で人が苦しんでるって言うのに高みの見物決め込んで笑ってるような人格破綻者な上に、
いざと言うとき頼りにならないわ、人に恥ずかしい格好強要させる変態デバイスだけどね」
「い、いや、別にそこまで言ってねーぞ?」
「それでも、アイツは私の相棒なのよ!!」


 ●


「貴方は、ヒーローというものを信じますか?」
「ヒーロー?」
「ええ、例えどのような苦境に陥ろうとも、呼べば応え、駆けつけて、如何なる困難も打破することのできる、
そんな御伽噺のような存在」
「確かに、それは御伽噺だな」
「そうですね、でもヒーローは居るんですよ? 少なくとも、私には」

「さぁ――事件ですよライトニングヒーロー」
「じゃあ、世界を救いましょうか」


 ●


《私が居なくて寂しくは無かったかね、マイマスター?》
「ほんのちょっと前まで気分爽快だったんだけど、今は奈落の底に落ちた気分よ」
《ははは、ならば楽しもうではないか、奈落の風景を》
「ええ、偶にはそういうのも悪くは無いわね」
《では彼奴等に教育してやろう、本当の魔法少女とは如何な存在かと言う事を》


 ●


「ふ、ふははは! 私らをここまで追い詰めるとはな、ライトニングヒーロー、そしてリリカルティアナ!」
「ライトニングヒーロー呼ばないでください!」
「リリカルティアナ言うな!」
「くくく、せやけど、私らもただでやられるわけにはいかへん! みよ、この最終兵器を!!」
「一升瓶?」
「……あ、あれはまさか」
「知ってるのエリオ?」
「そう、これこそ幻の吟醸酒、その名も
『冥王がSSXで出てきちゃったから急遽名称変更『大魔王』!』(アルコール度数:全力全開百二十パーセント!)
そして、背後にあるこのロケットには『大魔王』が積まれている! この意味が、解るな?」
「ま、まさか!」
「そう、これを使い全世界に『大魔王』を撒き散らす、さて、どうなるやろな?」
「な、なんて無茶を!?」


 ●


「なんていうか、被害者同士仲良くなれそうよね、私達」
「ですね。でも、こういうのも楽しいです、僕は」
「奇遇ね、私もよ」
「気が合いますね」
「そうね」

《では行こうか、魔法少女リリカルティアナ》

「ええ、事件ですよライトニングヒーロー」


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ライトニングヒーロー
VS
魔法少女リリカルティアナ

〜祝福の風団、史上最大の侵略〜




 ミッドチルダ一部劇場において今秋レイトショー決定!



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