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お題SS第9回

エリオとキャロ : 麻雀





「リーチ一発ごまかした」      執筆:コン





「エリオ君。それ、ロン」
「え、これ!?」
「うん、それ」

 ある休日、エリオとキャロは二人麻雀をしていた。

「エリオ君、さっきから負けっぱなしだよね」
「う。な、なんでなんだろうね」
「うーん」

 点棒の支払いを行なう最中でキャロは言う。

「エリオ君って分かりやすいからじゃないかな?」

 実際、エリオはキャロに手牌も待ちも完全に読まれていた。点棒をむしり取られ続け、残りは千点が二本という貧弱っぷりである。
 これには頭を抱えるしかなかった。

「そんなに分かりやすいかなぁ……」
「うん。すっごく分かりやすいよ?」

 こともなげに肯定されてエリオは溜め息を零した。何を考えているか分からないと言われても困るが、分かりやすいと断言されても複雑だ。
 反応に困ったエリオを前にしてキャロはくすくすと笑った。

「エリオ君のことはいつも見てるからよく分かるんだ」

 キャロとしては、それは何気ない一言だったのだろう。だが、急激に気恥ずかしさを覚えたエリオは頬を朱に染めて俯いた。
 すると、残り二本になった点棒が目に入った。
 顔を見上げると天使のような微笑を浮かべたキャロがいた。けれど、彼女こそが点棒を毟り取った張本人である。

「あ、あはは」

 世の理不尽に直面したような気がしたエリオは泣き出したい気持ちでいっぱいになった。

「約束は覚えてるよね、エリオ君?」
「う、うん。負けた方は勝った方の言うことを一つだけ何でも聞く、だよね」
「そうそう。忘れちゃダメだからね」
「忘れはしないけど、キャロは僕に何をして欲しいの?」

 牌を詰み終え手牌の用意を終えたキャロが―――不敵な笑みを零した。
 知らず、エリオの背筋に冷たいものが走った。

「それは―――この勝負が終わったら分かるよ」

 瞬時にしてキャロの瞳に肉食獣じみた光が宿った。

「キャ、キャロォッ!?」

 エリオは肺を握られる錯覚に震えた。狩猟者を前にして息が詰まった。
 嫌な汗が噴き出た。動悸が高まっていた。逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。

「くすっ♪」

 悪魔が、奈落へ堕ちろと微笑んでいた。





     ◇     ◇     ◇





「あのさ、キャロ……?」
「なーに、エリオ君?」

 結局大敗したエリオは苦笑いしながら牌を切っていた。

「本当にこれでよかったの?」
「うん。エリオ君にはつまんないかな……?」
「あはは、そんなことは無いよ」

 キャロの望みは麻雀の継続。二人は、賭けも何も無く麻雀を続けていた。
 もっとも、ゲームの性質上駆け引きだけはあるわけだが。

「でも、他に頼むべきことが何でもありそうだったから不思議になったんだ」

 少し悩んでから牌を切ったエリオの言葉に、キャロがぴくりと身を揺らした。

「……い、いいでしょ?」

 急にそっぽを向いてしまうキャロ。見れば、うっすら頬に赤みが差していた。
 ますます分からなくなったエリオが小首を傾げる。

「……だって、二人で一緒に遊びたいなんて恥ずかしくて言えないよ」
「え? キャロ、何か言った?」
「何も言ってないよ!」

 ごまかすように声を張り上げ自分の手元の牌を切るキャロ。だが、彼女は何かに気づき小さな悲鳴を上げた。

「ああっ!? 今エリオ君が切ったの、私の和了り牌だったのにー!?」
「へえ、そうだったんだ」
「あ、言っちゃった!?」

 慌てふためくキャロの姿に今度はエリオがくすりと笑う番だった。

「さあ、それなら今回こそ勝たせてもらおうかな!」
「ま、負けないから!」

 二人麻雀に熱中していくエリオとキャロ。なんだかんだで二人は楽しそうに笑っていた。

「……きゅー」

 素直になれないお年頃になった主の姿に、フリードだけが溜め息を零してはいた、が。


 ●



 感想などは 『魂の奥底から叫んでみよう!』 へどうぞー







「君に牌を」     執筆:緑平和





 始まりは、何のことは無い何処にでも転がっているような出来事からだった。
「ねぇ、エリオくんあれ何かな?」
 その時、僕はキャロと一緒に六課の娯楽室にやってきていた。
 普通、オフシフトともなれば身体を休めるか、自主錬をするのが常であるため、ここにはあまり足を運んだ事がない。今日は色々と見て回ろうと言うキャロに誘われて、ここ娯楽室までやってきたと言うわけだ。
 しかし、娯楽室と銘打たれてはいるものの、あくまで六課の中にある施設だ。特別目を引くものがあるわけではなく、あるのはひっそりとしたバーカウンターに、ビリヤード台が一つ。まだ日も高い時間なので僕たち以外には誰の姿も見えない。どれほど贔屓目に見ても、僕たちが楽しめるような場所では無さそうだった。
 そんな風に、部屋の様子を見渡しながら、自分で言うのもなんだけど、随分と子供らしくない感想を思い浮かべていた時だった。キャロが何かを見つけて嬉しそうに声をあげたのは。
 その声に、つられてキャロの方を見てみれば、彼女は何やら部屋の片隅に置かれたテーブルを指差している。
 正方形の形をした妙な形をしたテーブルだ。始めはそれがなんなのかよく解らなかった僕だけれども、近づくにつれて、その正体を理解する。
 テーブルの上に、綺麗に揃えられておかれていたのは、様々な文字や模様の掘られた数多くの牌だった。麻雀牌と呼ばれるそれを僕は偶然にも知っていた。昔、フェイトさんに連れられて年始のハラオウン家に遊びに行った時、クロノさんやアルフとその牌を使って遊んだ覚えがあったのだ。
「ってことは、麻雀卓なのかなこれ? なんだか随分とものものしいけど」
 なにやら機械やら表示板の付いた机を見詰めながら僕は呟く。後で知ったがそれは全自動麻雀卓と呼ばれる、麻雀をするための本格的な機械だったそうだ。それにしても、確かコレはフェイトさん達が元いた世界での遊具の筈なんだけど、どうしてこんなところにあるんだろうか?
「エリオくんは、これがなにか知ってるの?」
「え、あ、うん……昔、アルフにちょっと教えて貰ってたんだ。簡単にいったら牌っていうこの駒を使ったゲーム……かな」
「そうなんだ……ねぇエリオくん、よかったら、私にも遊び方教えてくれないかな?」
「僕もそれほど詳しい方じゃないけど、構わないよ」
 折角キャロが誘ってくれたのだ。このまま何もせずに帰るよりかは、適当に麻雀牌を触って遊ぶ方が遥かに有意義だろう。僕は綺麗に並べられた牌を崩して適当に並べなおしながら口を開く。
「麻雀は簡単に言ったらカードゲームなんかと同じで、三十四種それぞれ四枚ずつある牌を、交互に一枚ずつ交換して、役っていうのを揃えるゲームなんだ」
 言いながら、バラバラの牌をキャロに見えるように規則的に並べなおしていく。
「手札になるのは十四枚。これを揃えていくんだけど、刻子――同種の牌を三枚か順子――並び数字で三枚をワンセットとして四セット。それに対子――同種の牌を二枚揃えるんだ。これが目指す基本的な形になるよ」
 役でもなんでもないが、適当に四面子一雀頭を作ってキャロに見せる。それだけで彼女は随分と楽しそうに瞳をキラキラさせていた。
「まぁ、他にも覚えなきゃいけないルールとかあるんだけど、それは口で説明するより実際にやってみた方が早いかな」
「そうなんだ……ねぇ、エリオくん。やってみない」
「うん、そうだね。試しにやってみた方がいいかも……本当は四人一組でするのが正式なやり方みたいなんだけどね」
 とはいえ、あくまでキャロに教える為のものだ。それほど本格的なルールに則る必要は無いだろう。
 そんな事を僕が考えていると、娯楽室に新たな来訪者がやってきた。
「お、誰かおる思うたら、エリオにキャロやない」
「あれ、八神部隊長にリイン曹長」
「二人揃ってこんなとこで何しとん……って、なに麻雀するつもりやったん?」
 牌を触っている僕を見て、八神部隊長の声のトーンが一段階あがった。
「はい、八神部隊長もご存知なんですか、麻雀?」
「知ってるも何も、その牌と卓は私の私物やよ。六課建てるときに持ち込んだんよ」
 誇らしげに胸を張りながら言う八神部隊長。そんな彼女が指差す先をよくよく見れば、卓の隅っこに『雀荘・植田』と掘られていた。なんのことだろう?
「えっと、使っても大丈夫でしたか?」
「ええよええよ。娯楽室にあるんやからみんなで使ってくれたら」
「そうです、もし良かったら八神部隊長もご一緒にやりませんか? ねぇエリオくん、これって四人でやるゲームなんだよね、だったら丁度いいんじゃないかな?」
 キャロがわぁ、と表情を明るくしながら呟く。もちろん、僕もその提案に反対するつもりは無い。
「お、ええの? 私も最近は面子が揃わんかったからご無沙汰やねんな。折角やったら遊ばせて貰おうかな」
「私もいいんですかー」
「当たり前じゃないですか、みんなで楽しみましょう!」
 そういって華やかに笑うキャロやリイン曹長。こういうところは女の子なんだなーと、その姿を眺めながら感慨に耽る。
「いま、さらっと私が女の子枠から外れてたみたいやけど……まあええわ。それより、どうせ麻雀するなら、なんか賭けへん?」
 八神部隊長が慣れた手つきで自動卓のスイッチを入れると、パカンと卓の中央に穴が開き、そこに牌が吸い込まれていく。おお、ハイテクだなぁ。
「って、なにを言い出すんですかいきなり! 部隊長が賭け事を推奨しないでください!」
「いや、別にお金賭けるとか言うてへんやん? ほら、折角の麻雀なんやから負けたら一枚ずつ脱いでいくとか……」
「余計タチ悪いじゃないですか!」
「なんやのん、エリオは男の子やから喜ぶとこちゃうん?」
「男とか女とか言う前に、健全な人は脱衣麻雀なんてしません」
「存在そのものは知ってるんやな」
 しまった! 墓穴を掘ってしまった!?
「え、えっと、それは……その、そう言うのもあるって話を……」
「それだったら、負けた人が勝った人の言う事を一つ聞くというのはどうです〜」
「あ、いいですね、それ。楽しそうです」
 と、口篭る僕の横でリイン曹長がそんな提案を口にする。意外なことにそれに同意したのはキャロだった。
「え? キャロいいの? まだルールもよく解ってないのに」
「大丈夫だよー、それにそっちのほうがしっかり楽しめそうだしね」
「せやせや、私も素人相手に本気になったりせえへんよー」
「んー、まぁキャロがいいならいいんですけど……」
 渋々と頷く僕。そんなこんなで僕らの麻雀勝負は始まることとなった。

 ●

 山から牌を手繰り寄せる。なかなかいい感じの配牌だ。とはいえ初心者のキャロ相手に真剣勝負と言うわけにも行かないだろう。
 見れば対面に座った彼女は、今にも山を崩しそうな危げな手つきで手牌を整えている。
 目が合うと、キャロは恥ずかしそうに頬を染めた。
「み、見ちゃダメだよ。真剣勝負なんだから!」
 必死になって牌を隠そうとするキャロ。どうやら彼女は真剣のようだ。だけどもその仕草が可愛らしくて笑みが我知らずに漏れてしまう。そんな僕を見て、キャロは「もう」と不満そうな顔をするのだった。
「ほ、ほらエリオくんが親だよ。早く始めよう?」
「はいはい、解ったよ。じゃあ、始めようか」
 そう言って僕は不要な牌を掴むと、それを何気ない手つきで場に置いた。


「ロン」


 キャロが、手牌を僕に見せ付けるように倒していた。
「…………は?」
「人和――実戦だったらトビだったねエリオくん」
 笑顔のキャロがそこにいた。点棒のやり取りは行う予定は無かったのでハコではないが、僅か一打で負けてしまった。
「え……あの、キャ、キャロ?」
 見れば、確かにキャロの手牌は役が出来ていた。ものの見事な役満である。
 しかしだ。なぜキャロがそんな役を知っているんだ。いや、それ以前になにやら視線が生半可じゃないというか、数々の鉄火場を練り歩いた雀鬼のようなオーラを放っている。
「じゃあ罰ゲームは、これからエリオくんは語尾にニャンを付けること♪」
「い、いやそうじゃなくて、これは――」
「エリオくん……ニャン、だよ」
 声を上げた僕を、キャロの鋭い眼光が縫いとめた。
 その冷たい視線を受けて、僕は怯んだように視線を泳がせる、その先にはニヤニヤと暗い笑みを浮かべる八神部隊長の姿があった。
「んー、どないしたんエリオ? まぁほら、罰ゲームやからしゃあないわなぁ? ちゃんとニャンって言わへんと」
 そこで僕はようやく理解する。何もかもが、用意された罠であることを。
「だ、騙された!」
「エリオくん、ちゃんと言い直そうね」
 キャロの、冷たい一言が僕を襲う。
「え、いや、今のは……」
「エリオくん?」
「な、なんでもないです……ニャン」


 地獄が始まろうとしていた。


 ●

『エリオくんが、一度でも勝てたら、ゲーム終了してもいいよ?』
 そんな条件が付けられて――果たして何局たっただろうか?

「ロン! チートイ・ドラドラ!」

「それは通らんなぁ。ロン! リーチ・一発・一盃口」

「ロンです! えーっと……文字が一杯です!」

 一言で言いあわらすならば、壊滅的な敗北だった。
「……ご主人様、もうそろそろ勘弁してくださいニャン……」
 何処までも憔悴しきった声で呟く。ちなみに怪しげな言動は全て罰ゲームによるものだ。加えて今の僕は猫耳、メイド服、メガネを装備させられている。正直なところ、今すぐ死にたいところだった。
「は、はぁはぁ……だ、だめだよエリオくん。コレからが本番なんだから!!」
「これ以上何をさせる気なんですかご主人様!! ニャン!」
 キャロは局を負うごとに(僕に罰ゲームが執行されるたびに)何故か息が荒くなっている。目つきもなぜ獲物を狙う肉食獣の如きそれで、さっきから背中に流れる冷や汗が止まらない。
 一度、実力行使で逃げようとしたが、その時は八神部隊長たちが全力で僕を捕縛してきた。逃走が無駄である事は身に染みて理解している。
 僕がこの地獄から逃れるには一度。たった一度だけでいいからキャロたちより早く和了ることだけだった。
 しかし、この三人の雀力は凄まじく、まったく太刀打ちできない。点数計算はしていないので安めの手で和了してもよいのだが、手を進めようと安牌以外を切るとあっという間に和了されてしまった。
 運のゲームゆえに、一度くらい僕にチャンスが来てもいいものだが、完全な三対一ではそれはあまりにも儚い望みでしかなかった。
「さぁさぁ、次のゲームにいこう! そろそろ罰ゲームのレベルを次の段階へあげるよー」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!?」
 ゲームは続く。既に運すら僕を見放したのか、配牌もバラバラ。あまりにも絶望的な状況である。
「ああ、神も仏もいないのか……」
 誰にも聞こえないように小さく怨み言を呟く(聞かれると罰ゲームを強制される)。

「あれ? はやてにキャロ? それに……エ、エリオ?」

 そんな時だった。僕らの背後で驚きに満ちた声を上げた人がいたのは。聞き覚えのあるその声に慌てて振り返る、そこにいたのは、フェイトさんだった。
 僕の格好を見たせいか、声が上擦っている。まぁ、メイド服着てればそれもそうだろう。
「フェ、フェイトさぁん……た、助けて」
 その姿を見て、僕は情けないながらも涙声でその名を呼んでしまう。
「ぐはぁっ!」
 なぜか、鼻頭を抑えて仰け反るフェイトさん。
「な、ななな、なに、この桃源郷は!? じゃなくて、この状況は!?」
「え、えっと、ちょ、ちょお麻雀で遊んでてな」
 なぜか慌てて呟く八神部隊長。なんだろう、この慌てぶりは。
「そ、そうなんです。これはちょっと罰ゲームで」
「ば、罰ゲーム?」
 そう言って、僕をじっと見詰めるフェイトさん。とはいえ、さすがに今のこの姿をじっと直視されるのは恥ずかしい。
「あ、あんまり見ないでください……」
「ふおぁっ……あ、安心してエリオ、今私が何とかするから」
 なぜか今のキャロと同じような視線のまま、僕の肩を力強く握るフェイトさん。なぜか不安がよぎるがどうしたものだろう。
「とりあえず、これで勝てばいいんだよね」
 しかし、そんな僕の不安を拭うようにすっと、フェイトさんは僕の席に変わりに座る。
「そう、ですけど……でも」
「いくらフェイトさんでも、エリオくんは渡しません! ここで決着をつけます!」
 親のキャロが力強く牌を切ると同時に、リーチ棒を場に出す。
「お、親のダブリー……これじゃあ」
 それに比べ、こちらは牌がばらばらのままで安牌もない。正に絶体絶命のピンチだ。
 だが、フェイトさんはまるで動じることなく。牌をツモる為に山に手をかけた。
「安心してエリオ。私は、必ず勝つ」
 そして牌が積もられた。瞬間、おかしな事が起こった。フェイトさんの手牌が大きく様変わりしていたのだ。先程はなかった現物の牌する存在している。
 言葉には出さずに、僕は心の中で何故、と問いかける。
「出たな。フェイトちゃんの得意の『電光石火』! 目にも留まらぬ超高速で牌を入れ替える高等テクニックや!」
「それ、イカサマじゃないですか!?」
 抗議の声をあげるキャロ。しかし、現場を押さえられない限り、イカサマかどうかを確かめる術は無い。つまりフェイトを止めることは出来ない。
 フェイト自身もそれを理解しているのか、はやての言葉に自嘲気味に笑みを浮かべるだけだ。
「本当なら、こんな技に頼りたくないけど、今は緊急事態だからね――」
 いいながら、現物の牌を切るフェイトさん。再び同時に手牌が再び姿を変えていく。
「そ、そんな無茶苦茶な! こ、こうなったら私がツモあがりで!!」
 そう言って、牌をツモるキャロ。しかし、それは求めていたものとは違ったのか、苦い表情を浮かべる。
 そのまま、力無くその牌を場に出すキャロ。その瞬間――

「ロンだよ、キャロ」

 フェイトさんの牌が倒された。
 九面待の純正九蓮宝燈がその時点で既に完成していた。ダブル役満である。
「そ、そんな……」
「力に溺れる者は、いつか力に敗れるんだよ、キャロ」

 そう、悲しげに勝利者宣言するフェイトさん。
 こうして、終わることの無いと思っていた僕の地獄は、あっさりと終わりを告げたのだった。

「か、勝ったんですか、フェイトさん」
「うん、もう安心していいよ、エリオ」
 そういって、フェイトさんは席を立った。それを止める者はもう誰もいない。
 そうして、フェイトさんはゆっくりと、僕の方を握ると。
「ハァハァ……これで、エリオは私のものだね」
「へ……?」
 やっぱり鼻息が荒かった。
「え、あの、フェイトさん?」
「だ、大丈夫大丈夫! 私はホラ、優しくするから!」
「何がですか!! ここは綺麗に落とすとこじゃないんですか!?」
「勝利者の言う事はゼッタイなんだよね! 罰ゲームなんだよね!!」
「うわぁ、そっちが目的だったのこの人!?」


 そうして、始まる二度目の地獄。
 とりあえず、麻雀なんて二度とするものかとその日僕は心に誓った。


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